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改革論議の考察資料「指定生乳生産者団体制度改革をどう考えるか」

 当研究会の会員にも名を連ねていただいた、北海道大学大学院 農学研究院 基盤研究部門 農業経済学分野 食料農業市場学研究室の清水池義治 講師より、現在の指定生乳生産者団体制度改革を考えるポイントを整理した「資料」のご提供をいただきました。
 以下に、清水池先生から当ブログ読者に向けて寄せられた文章とともに、資料「指定生乳生産者団体制度改革をどう考えるか」のPDFファイルデータを読者にご提供します。(2016年11月14日、管理人)


 酪農乳業関連制度研究会会員の清水池です。

 指定団体制度をはじめとする既存制度の問題点について大いに議論がなされること自体はよいことではありますが、前提として、議論の対象となっている制度がどのような役割を社会で果たしているかという認識を共有する必要があろうかと思います。そういった問題意識のもと、指定団体制度と乳製品関税に関する論考をまとめた資料を、このブログの読者のみなさんにご提供いたします。内容は関係者の方々にとっては自明のものではありますが、あまり制度に詳しくない方々に対する説明の際には多少役立つかと思います。

 本資料は2016年11月10日に札幌市で開催された、北海道農業ジャーナリストの会・平成27年度第2回研究会で清水池が使用した資料をもとに、一部を修正したものです。本資料の内容に関しては、報告者の清水池が全責任を負うものです。

 口頭による講演での配布資料がベースですので、説明不足の箇所もありますが、ご容赦ください。制度改革をめぐる議論の中で本資料が有効活用されることを希望いたします。


 資料はこちら>










 
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英国の制度廃止の影響に関するMMJの言説は事実に反する

研究会の会員から以下の文書について、掲載要請がありましたので公開します。


英国の制度廃止の影響に関するMMJの言説は事実に反する
                    
 MMJ社ホームページの2016年11月8日付コラム「結果ありきの調査団報告」で、Jミルクが企画した「英国酪農乳業現地調査報告」が取り上げられている。どうやら、英国がミルク・マーケティング・ボード(MMB)を解体した結果、乳価の急落に伴い酪農家の所得が大幅に低下したという事実を、牛海綿状脳症(BSE)のせいにして全面的に否定したいらしい。そこで、ブログ読者に事実関係を正確に理解していただきたいと考え、ここではMMBの解体過程に関連する事実関係を整理・確認し、本来の議論の対象である規制改革推進会議の提言ではないものの、あえてコメントすることとしたい。

 今回の調査は、2013年10月に横浜で開催された「World Dairy Summit 2013」の際、英国の酪農乳業関係者から英国への招待を受けたことが発端となって、約1年前から企画されたものであり、自民党・畜産酪農対策小委員会で報告することが目的ではない。そもそもMMB解体に関する経緯や結果は、業界内では解体当時から、制度改革というものに慎重な検討を要するモデルケースとして周知の事実であった。

 また、2015年7月の自民党提言を受けた農水省生産局長からの私的な諮問により、酪農乳業界では「生乳取引のあり方等検討会」で生乳取引改革を議論したが、同年10月にこの検討結果を報道関係者に記者会見で説明した際にも、複数の報道関係者から英国のケースに関して強い関心が寄せられており、業界側としても、英国の制度改革に対する評価を、今日的に再確認する必要性が強く意識されるものとなった。

 今回の調査は、そうした英国側の酪農乳業関係者と交流する中で、英国内における現段階での酪農・乳業関係者の評価を改めて確認する必要性が議論され、実施されたものだ。調査のタイミングがたまたま規制改革論議と重なったため、調査で得られた重要な情報として、調査に参加した乳業関係者から自民党・畜産酪農対策小委員会で報告されたという経過である。

 まず初めに読者に伝えたいのは、今回の調査を通じて、調査団は数多くの英国の酪農・乳業関係者にインタビューする機会を得たが、誰一人としてMMBの解体に伴う乳価の下落に関して、BSEとの関連に言及した者はいなかったという明白な事実である。その上で、英国の轍を踏むべきではない、との親身なアドバイスをいただいたことを強調しておきたい。英国の酪農乳業関係者がMMJのコラムを読んだら、さぞかし驚くことであろう。

 MMBが解体されたのは1994年末のことである。他方、BSEがイギリスで確認されたのは1986年のことである。このため、86年以降、何度か消費者の間に不安が広がった。コラムには「96年にはBSEの犠牲者が発生し、消費者は恐怖に震えた。牛肉や乳製品の輸出は止まり、価格は大幅に下落した」とある。まるで、英国の1997年から2006年頃まで続く生乳価格の下落と低迷は、すべてBSEのせいであるとでも受け取れそうな書きぶりである。

 しかし、ここにはいくつかの事実とは明らかに異なる記載がある。

 第1に、MMJのコラムで「96年にはBSEの犠牲者が発生し」とあるのは、「変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)」とBSEの関係が科学界から取りざたされ始めたことを指すものと読める。念のため記せば、BSEとvCJDの明確な因果関係は、現時点でも科学的な断定がなされたとは承知していないが、日本国内でもすでに、食品安全委員会によるリスク評価を踏まえ、各種のBSE規制や安全管理上の国内対策が実行に移され、国際獣疫事務局(OIE)からも「無視できるリスク」の国に認定されている。厳密に言えば、「BSEの犠牲者」がヒトで生じたとは断定されておらず、ヒトに被害を広げる「懸念」の問題であった。

 第2に、そのvCJDが英国で確認されたのは「1996年」ではなく「1995年」のことである。1996年3月には、英国CJD諮問委員会がvCJD とBSEとの関連を示唆しており、「懸念」が報じられたのはそれより少し前、という時制になる。こうした状況の中で、牛肉の消費は1995年末から大幅に低下し始めるが、これに反して、生乳の取引価格は1995年から1996年を通して高水準を維持している。

 第3に、MMJのコラムでは、BSEの発生により「乳製品の輸出は止まり」とあるが「乳製品の輸出は止まっていない」。OIEによる国際規則上、乳製品は輸出規制の対象とはならない。現に、英国の乳製品の輸出額をみると、1994年6.9億ポンド、1995年8.2億ポンド、1996年7.4億ポンド、1997年7.5億ポンドと安定的に推移している。以上のとおり、BSEの発生により乳製品の輸出が止まり、価格が下落したというのは明らかに事実に反する
 そもそも英国は牛乳乳製品の自給率が80%強しかない乳製品の純輸入国であり、もともと乳製品の輸出は少ない。しかもこの当時、英国にはEUの生乳クオータ(生産枠)制度に基づく国別の生産枠が課されており、生産・貿易ともに安定的に推移していた期間でもある。

 第4に、MMJのコラムが言う、生乳取引の「価格は大幅に低下した]時期とは、vCJDが確認された1995年ないしBSEとの関連が示唆された1996年3月ではなく、1997年の春になってからのことである。
 その原因は、英国のMMB制度が廃止された後、一元集荷多元販売などの法的権限を持たないミルク・マークという酪農協(共販組織)によって導入された乳価形成システムへの乳業メーカーの反発や、酪農家との直接取引契約の拡大により乳業メーカーがミルク・マークの組織力の切り崩しを図ったことなどにある。BSEが生乳取引価格低下の原因だとするならば、vCJDが確認されて国民がパニックになったとされる95年ないし96年に急落しなければならないが、95年から96年はその前後の年と見比べても、最も高い水準を維持していた期間である。
 なお、MMB解体直後の約2年間、生乳取引価格が高水準を維持した背景とは、ミルク・マークが多種類により構成した、生乳の複雑なサービスタイプ別の契約方式に対し、この得失を慎重に見極めていた乳業メーカーが、生乳の安定調達を優先する契約方式の入札に集中するとともに、同様の目的から乳業メーカーが酪農家の囲い込みに走ったことなどによる。

 以上のとおり、事実誤認を数点指摘する。コラムを書く最低限の作法として、論旨の根幹を成す事実関係については、確認や裏取りが不可欠であろう。一般論として、誤認や虚偽に基づく意見展開は、そう主張する動機に不純な意図があるのではないか、という疑念を招きかねないものであることを、老婆心ながら指摘しておきたい。(研究会員P)










この改革論議は「英国の轍を踏むもの」ではないのか

 研究会の共同代表である矢坂先生をはじめ、酪農乳業関係者が日本で現在、規制改革推進会議で議論されている方向と極めて酷似した生乳流通改革の先進事例である、英国の生乳取引・流通改革の結果に関して、この10月、緊急に現地調査を行ったそうです。調査に参加した会員の方から、調査の概要報告を当研究会にお寄せいただきましたので、公開します。(2016年10月20日公開)


英国のMMB解体に関する緊急報告

1 規制改革会議提言は真逆の結果を招くことを英国で確認

 規制改革推進会議農業ワーキンググループ(WG)が、10月13日から牛乳・乳製品の生産・流通について検討を開始する中、先週、英国を訪問してミルク・マーケティング・ボード(MMB)の解体過程について調査する機会を得たので、その概要を緊急に報告します。調査はJミルクが企画し、10月10~13日、酪農乳業関係企業、団体の関係者で行ったものです。

 MMBは1933年に設立され、約60年後の1994年に解体されました。MMBの主な機能は、生乳の一元集荷多元販売とこれに伴う生乳の需給調整、生乳流通の合理化、さらには乳業者との交渉による用途別生乳価格の決定、生産者へのプール乳価での支払いなどであり、日本の指定団体の有する機能とほぼ同じと言っていいでしょう。

 したがって、英国のMMBの解体は、日本の指定団体から指定をはずし、新たな組織の設立を自由に行えるようにすることとほぼ同様の規制緩和対策でした。その結果、英国の酪農家、乳業メーカー、そして小売業にどのような影響を及ぼしたのかを検証すれば、規制改革会議の提言が日本の酪農乳業にどのような影響を及ぼすことになるか、ほぼ予測することができるものと思われます。

 なお、英国で生産される生乳の約50%は飲用に仕向けられ、自給率は80%強と、ヨーロッパの中では最も日本の市場構造に近似しています。

 今回の調査で得られた英国における規制緩和対策の結果を順不同で箇条書き風にまとめれば、次のようになります。
1 用途別乳価が維持できなくなり、単一乳価に
 MMBによる一元集荷多元販売・需給調整の機能が失われたことにより、用途別取引が維持できなくなり、飲用向け・加工向けなどの用途別格差のない単一乳価となった。
2 酪農協を設立したものの、酪農家の離脱が加速化
 MMBの解体に伴い、その後継組織として酪農協が設立されたものの、一元集荷多元販売という独占力を失ったため取引乳価は次第に低下し、それに伴い生産者の酪農協からの離脱が加速化していった。酪農家の離脱により酪農協の競争力はさらに低下し、取引乳価が低下するという悪循環に陥った。
3 商系乳業メーカーは工場近隣の酪農家から生乳を調達
 生乳流通(輸送)コストのプールがなくなり、用途別の乳価格差もなくなったこと、さらには生乳を安定的に確保するため、商系乳業メーカーは飲用乳向け・加工向けにかかわらず、直接取引等により近隣の酪農家から生乳を調達するようになっていった。(注:現在、約6割が直接取引)
4 乳価は急落し長期低迷
 酪農協により提案された契約タイプ別の乳価形成方式により約2年間はそれまでの飲用向けの乳価水準を維持できたものの、その後乳価は急落し、最も低いバター・脱脂粉乳向けの加工乳価水準にまで低下し、常態的に張り付くようになった。しかも、その低下幅は大きく、わずかの期間に3割以上もの低下を示した。
5 小売価格は下がらず、酪農家の生乳販売価格だけが低下
 乳価は加工向けの下限値水準まで低下したものの、飲用牛乳の小売価格は下がらなかった。乳業メーカーの取り分にも大きな影響はなかったことから、結果的に、酪農家の所得が小売業に移転されただけという結果となった。

 以上のとおり、MMBの解体という規制改革により、英国の酪農家の所得は大幅に低下し、酪農経営の将来性を悲観した酪農家の離農が加速しました。乳業メーカーの過半が外国資本に置き換わり、消費者ニーズに応じた生産どころか、酪農乳業を小売業が支配する体制が出来上がってしまったというのが、酪農家や乳業団体関係者の声でした。その上で、彼らは自らの苦難の経験を踏まえて、日本は英国と同じ轍を踏むべきではない、との強いアドバイスをいただいたことを読者や規制改革推進会議の委員の皆様に伝えたいと思います。

 英国におけるMMBの解体という規制改革は、ほぼ3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」に関する補論で詳述したとおりの結果であったといっていいでしょう。推測のみで空理空論を述べたわけではないことが事実によって証明されたものと思っています。以前の「規制改革会議」では、生乳の生産・流通の大宗を担う実務責任者の真摯な意見に十分に耳を貸すことはなく、このような他国の先行事例を調査・分析し、提言から予想される結果について検証することも全くありませんでしたが、名前を改め新たに設置された「規制改革推進会議」においては、真摯に対応していただきたいと思います。規制改革推進会議の賢明なる委員の皆様には、全国の17千戸の酪農家と関連産業の命運を左右する大きな改革について検討しているのだという責任感の重さを改めて認識していただき、慎重に検討していただくよう切に願うものです。


2 英国の酪農乳業関係者は、MMBの下での安定した生産や経営の方が望ましい、日本は英国の轍を踏むべきではないとの考え

 ここでは、今回の調査を通して聞いた、英国の酪農乳業関係者の生の声を紹介したいと思います。

Dairy UK (英国の乳業団体 政策部長)ピーター・ドーソン氏
 MMB解体の動機のひとつとして、英国の酪農家は他のEU諸国の酪農家よりも利益を得ていないのではないか、という一部の酪農家による不満があった。他方、乳業者側は、制度の変更の必要性はないとの立場であった。生産者が求めていたのはMMBをなくすことではなく、乳業者側の交渉相手であるDairy Trade Federationによる独占交渉の権限をなくしたいというものであった。それが実現できれば、加工向けも含めて、生乳取引価格は最も高い飲用向け乳価水準に引き寄せられるに違いないと見込んでいた。しかしながら、結果は全くの逆で、最も価格の低い加工向けの乳価水準に張り付くこととなってしまった。
 MMBの一元集荷多元販売の権限が失われたとから、用途別乳価は維持できなくなった。生乳は単一乳価となり、国際商品市場などの影響を強く受けるようになり、短期間に3割以上も急落した。加工向け水準にまで低下した乳価は、2007年に乳製品の商品市場価格が急騰するまでの約10年もの間、低迷したままだった。その後も短期間に大きな変動を繰り返しており、ミルクサプライチェーンの安定という点で、消費者にも、小売業にも、乳業にも、そして酪農家にも、望ましい姿にはなっていない。
政府は「競争を促し酪農と乳業の体質を強化する」ことを目指したが、英国の乳業者の過半は外国資本に市場を明け渡してしまった。MMBは基本的に間違ってはいなかった。生乳流通も効率的であった。こうした経験を踏まえると、今でもMMBが望ましいシステムであったと考えている。

酪農家(ヨーロッパ農業者連盟酪農委員長)マンセル・レイモンド氏
 (ウェールズ・ペンブロークシャーで620頭の乳牛を飼養、農地1500ha)
 MMBの解体を進めた要因のひとつが生産者にあるのは確かであり、自分も若かったのでそうすべきだと思っていた。しかし結果はまるで違っていた。生乳の生産・流通に関する基礎的な知識が足りなかった。MMB解体以降、乳価の国際商品市場との連動性が強まり、酪農経営は極めて不安定となり苦労した。乳業は北欧のアーラフーズに買われてしまった。比較的安定している飲用市場への酪農家の生乳出荷志向が強まり、小売業からの影響を強く受けるようになった。結果的には、酪農家も乳業も市場からの強い支配を受け、産業としての体質は弱まっている。
 本当に日本の酪農を守りたいならば、日本は英国と同じ過ちを繰り返してはならない。酪農の産業的特質を政府に理解させる必要がある。当時、自分も含め、英国の若い酪農家は、新しい変化に対して希望を抱いたのは確かである。しかし、結果的には小売業の強い影響を受ける構造になってしまい、酪農経営の自立性は弱まってしまった。

酪農家(農家民宿も経営)ドナルド・タイソン氏
 (イングランド・チェスター近郊で300頭の乳牛を飼養、農地200ha)
 9年間の実習等を経て、約30年前にリース方式により新規就農した。それからまもなくしてMMBの解体があった。MMBが解体されて2年間は乳業メーカーによる生産者の囲い込み(直接取引)もあり、高い乳価が維持された。しかしながら、その後乳価は急落し、世界的に商品市場価格が回復するまでの何年もの間、乳価は低迷したままだった。もし、妻が教師としての農外収入を得ていなかったなら、そして馬が高く売れなかったなら、酪農を続けることはできなかったかもしれない。近隣の酪農家も経営に苦しみ、多くの仲間が去っていった。収入を確保するために増産すると、さらに乳価が下がるという悪循環に陥った。MMBの解体(権限喪失)により酪農家の所得は減少し、生産基盤は弱体化し、消費者ニーズに応じた生産どころか、酪農家は乳業メーカーや小売業の下請け、言いなりになってしまった。
 酪農は他の農業に比較しても変化への弾力的対応に限界がある。乳牛を増頭したり飼養技術を変えたりして経営革新を行いたいが、その効果を出すには3年以上はかかる。しかし、現状のように乳価が変動し経営が不安定な状況では、経営計画を立てることが難しく、投資ための融資も受けられない。どんなに意欲的な経営者でも、変化に極めて弱いという酪農生産や生乳流通に特有の構造的課題に対処できなくなる。
これまでの経験を踏まえると、MMBは最も安定した望ましいシステムであり、可能なら今からでも戻すべきだと思う。価格が安定 して見通しが立つので、投資がしやすく、銀行も融資してくれる。日本は英国の轍を踏んではならない。


3 MMBと指定団体の相違点

 1では、英国のMMB解体による影響が、ほぼ3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」に関する補論で詳述したとおりの結果であったとしましたが、厳密にいえば、用途別乳価が維持できなくなり単一乳価になるなど、異なる点もありました。それは、英国のMMBと日本の指定団体では、いくつかの点で機能などが異なることが原因だと思われます。具体的には次のとおりです。

 第1に、MMBは域内で生産されるすべての生乳について一元集荷多元販売する権限を付与されているのに対して、指定団体への参加は酪農家の自由意思に委ねられているという点です。このため、日本の酪農家の指定団体への参加率は約97%となっています。

 第2に、MMBの一元集荷多元販売は地域内完結型であるのに対して、指定団体は他の指定団体の管轄する地域の乳業メーカー(工場)に生乳を販売することができるという点です。このため、隣接する地域同士の指定団体間などでは、乳業メーカーへの生乳販売をめぐる競争が行われています。

 第3に、MMBの下では用途別取引により飲用向け・加工向けの乳価が異なりますが、指定団体においては用途別に乳価が異なるだけでなく、加工原料乳には補給金が交付されるという点です。このため、飲用向け市場に限定して生乳を販売しようとする生産者との実質的な乳価の格差が小さく、需給調整のリスクや加工原料乳の価格面での不利性を負担する指定団体への酪農家の参加率の維持に貢献しています。

 以上のとおり、英国のMMBが極めて厳格に生乳を管理していたのに対して、日本の指定団体の方が規制は緩やかであり、指定団体と指定団体に参加しない生産者との間や指定団体間で、一定の競争が行われている点が異なっているといえます。また、補給金については、生乳の需給調整のリスクと加工原料乳の価格面での不利性を補うものとして交付されているものですが、大手マスコミなどで報道されているように、補給金がほしくて指定団体に参加している生産者はほとんどいないと思われます。アウトサイダーの生産者が飲用向けに限定して生乳を販売することにより高い乳価を享受しているのに対して、インサイダーの生産者は、加工原料乳の生産と需給調整を引き受ける結果として補給金が交付されているに過ぎず、それでもアウトサイダーの生産者よりも手取り乳価がやや低いというのがほとんどの酪農家の認識ではないかと思われます。

 制度としての安定性から言えば、新しい組織ができて補給金の交付対象となることよりも、むしろ新しい組織が需給調整の義務を負わないことの方がより問題は大きいのではないかと考えられます。現行の指定団体は、酪農家が自由意思により結束し、互助精神により需給調整の義務を自主的に負っているため、仮に新しい組織ができて飲用市場を侵食するようになったとしても、需給調整と用途別取引を維持すべく努力するものと思われます。したがって、英国のようにすぐに用途別乳価が維持できなくなり、単一乳価になることはないかもしれません。しかしながら、既存の指定団体からクシの歯が欠けるように、酪農家が新しい組織を設立あるいは新しい組織に移行しはじめれば、既存の指定団体がそのしわ寄せをすべて引き受けて需給調整を維持することは困難となり、用途別乳価も維持できなくなると考えられます。このため、早晩、英国のように単一乳価に向かうことになるものと想定されます。ここで留意すべきは、単一乳価となれば、加工原料乳に限定した補給金という考え方そのものが意味をなさなくなる点です。これだけでも様々な混乱が予想されます。








ブログ読者からの投稿メールより


いただいた意見の標題=議事録①
(2016年11月05日掲載。投稿は11月04日22時ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)

 10月18日の規制改革推進会議議事録が掲載されているのですが・・・19ページでMMJ茂木社長は東日本大震災翌日からMMJは集乳していた。危機管理が出来ているといった趣旨の発言があり。
 危機管理どころの話ではなく原発で安全性の定かでなかった生乳を出荷し続けたのかと。それを知らずに消費者は飲んだのではと読めるのですが。真偽不明ですがこれ大問題なんじゃないでしょうか。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nogyo/20161018/gijiroku1018.pdf
 「茂木社長(中略)震災のときも(中略)1日分集乳できなかっただけでそうなのですけれども、インサイダーの方は3月11日から4月末まで、集乳と受精は一切できないという通達が農協から流れて集乳できなかった。」


いただいた意見の標題=議事録②
(2016年11月05日掲載。投稿は11月04日23時40分ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)


 食品の暫定基準値が最初に決まったのは3月17日。空白の5日間、安全かどうか誰もわからなかったMMJの生乳はどこに流通したのだろうか。
 当時、一般的にシーベルトもベクレルもごちゃまぜのような状況だったではないか。だから農協?ははっきりするまで消費者のために組合員に涙を飲んで貰う通達を、したのではないか。それをMMJは無視したということだろうか。
 保健所のモニタリングは一定都県のクーラーステーションや乳業工場で定期的に実施されていた。
 MMJの出荷先、例えば●●の●●●●はその対象だったかもしれないが、●●の●●●●は対象外だったのでは。
 指定団体の生乳ならロットも多くクーラーステーションなどで合乳されて薄まるのでリスクを下げることもありうるがMMJは小ロットだ。
 これが大手乳業さんがいう安全な生乳を安定調達できるという指定団体の役割なのか。
 規制改革どころの話ではないのではないか。真相がわからず不安でならない。


いただいた意見の標題=議事録③
(2016年11月05日掲載。投稿は11月05日00時10分ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)

 http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nogyo/20161018/gijiroku1018.pdf
 食の安全を担う農水省や厚労省は改革される側のまな板に乗っており、かたや規制改革農業WGの担当は原発村を育んだ経産省からの出向者だったはず。
 政権が変わって、政治が正しい判断をしたとしても役人は役人。議事録を差し替えたりするかもしれない。その前に今のPDFをしっかり保存しておくべきでは。
 規制改革での本題ではないかも知れないがもっと根本的に大切ではっきりさせておく問題では。しかし私にははっきりさせるすべがありません。
 自分の誤読であってほしいのですが…連続投稿すみません。気が気ではないのです。
 広く議論する場を提供して下さっている先生方に改めて感謝します。







いただいた意見の標題=閣議決定に背く「改革」について、専門審議会の意見を聞かぬ不思議
(2016年10月27日掲載)

 農政の重大な政策変更を議論する農林水産大臣の常設諮問機関に「食料・農業・農村政策審議会」というものがある。しかし今回の規制改革会議から規制改革推進会議に続く、酪農の「指定生乳生産者団体制度改革」の議論では、その大元となる「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」において、法制度上、唯一の実行主体に定められる組織の改廃が論じられながら、この常設審議会で、未だ一言も、議論が交わされていない、政治上のミステリーがある。

 制定から半世紀にわたり、この制度を日本の酪農政策の根幹と位置づけられながら、その制度機能に重大な改変を加える改革論議が、専門審議会で議論すらされていないことも不思議だが、最近の酪農政策をめぐっては、この審議会で、つい昨年の平成27年3月、酪農に関する中期政策方針となる「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」について、5年に1度の改定を終えたばかりだ。

 その「基本方針」の目次をみると、生産基盤強化のための取組、収益性向上のための取組、国内消費者のニーズを踏まえた生産・供給、生産者団体(注:指定生乳生産者団体を含む)のあり方。、さらには集送乳の合理化など、規制改革会議で議論されている事項がほとんど含まれる。しかも、審議会の委員には複数の学識経験者や実際に酪農・乳業に携わる実務責任者に加え、消費者委員などもバランスよく含んでいる。

 「素人」を公言してはばからない委員が複数含まれ、酪農家の委員がつい最近、やっと1人だけ入った規制改革推進会議と、この「食料・農業・農村政策」審議会のどちらが、生乳の生産・流通や指定団体制度を検討する場としてふさわしいか。その答えは、考えるまでもない。

 しかも、このような生乳の生産・流通に大きな影響を及ぼす可能性の高い制度改革は、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」における生乳生産量や集送乳経費等の目標の実効性にも大きな影響を及ぼすのは確実だ。本来であれば、規制改革会議による、実体経済の影響を無視した、強引で恣意的な素人判断を避けるためにも、「食料・農業・農村政策審議会」においても、議論が行われるべき案件と考えられる。

 安倍政権の政治方針に、農政上、深刻な矛盾を生じているのは、昨年の3月に、この「酪農・肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」を、自身の政権下で中期政策方針として「閣議決定」をしておきながら、このブログが数々論じているように、その実効性がどうみても真逆の結果を招くとしか思えないことを、首相諮問機関の規制改革推進会議に論じさせていることだ。

 この指定生乳生産者団体改革は、「安倍政権下の矛盾」という点でも、政治不信の発火点になる問題ではないのか。何より現在、国会ではTPP協定の批准に向けた審議が進むが、安倍政権が昨年11月に閣議決定した「総合的なTPP関連政策大綱」における酪農の安定対策が、この規制改革論議の目指す方向の下で、どう実現するというのか。これは「国内対策で影響を回避するから、TPPの国会決議は守っている」という趣旨で数々重ねてきた、総理の口上に「酪農家をだましたのではないか」との疑念を強く抱かせる。




いただいた意見の標題=「制度疲労]とは思考停止を表す言葉ではないか。
(2016年10月25日掲載)

 酪農に限らず制度改革を声高に叫ぶ者から出る、何とかの一つ覚えに「制度疲労」という言葉がある。

 しかしそれは、具体的な対案すら描けずに、何とかの一つ覚えで「カイカクゥゥゥゥ!」と叫ぶためだけに用いられる、論者の「思考停止」を表現しているに過ぎない言葉だ。

 「50年も経てば、制度疲労を起こすのは当然だ」といわれれば、相手がその道の素人であればあるほど、反論するのは難しい。

 しかし、このブログでは、すぐに「そうですね」と言わない真剣な論考が重ねられていることに敬意を表したい。

 国の政策に関する議論である以上、大切なのは「公益の実現にどれほど有効なのか」であるのは論を待たない。

 だが、議論にあたって注意を要すのは、その議論相手が事情に通じて言っているのかそうでないのかを確かめることだろう。

 「制度疲労」と言う者たちに聞きたい。「具体的に、何の、どこが、どう制度疲労だと考えるのか」と。

 しかしここまでの議論をつぶさに見ると、その根拠とは50年分の暦をただ数え直すのに疲れた程度の「疲労」としか感じられず、その疲労のためか、眼前に広がる現実の分析さえろくに為し得ぬままに、空虚・蒙昧な「カイカク」を念仏のように唱える者の姿しか見えてこない。議論がまともにかみ合わぬことを、業界人たちは、まるで幼稚園児に哲学を説くような難しさのように感じ、隔靴掻痒たる日々を過ごしているのではないか。

 「建設的な議論」はハナから眼中になく、見識もなしに「カイカクすること」を総理に命じられた人々による、ひたすら「破壊」だけを目的としたこの議論の不毛とは、「カイカク」を唱える識者が幼稚園児並みであるのが悪いのか、それともいかなる難解な物事も、幼稚園児に100%分からせる、まるで魔法の「池上解説」のようなことができない業界や役人が未熟だということなのか。

 現状は、「まともな議論にもならぬ」と、可能ならば放置もしたい心境だが、この幼稚園児は言論の暴力という名の「危険な権力」を、いとも無邪気に振り回してくれる。自分で怪我をして泣き出すならば、それも微笑ましい社会教育というべきだろうが、大人の分別ある品格もなく、無差別に他人へ危害を加えるのも平気な様子に、「食料の安定を損ねることが、国民消費者に顔向けできることだとでも言うのか」と、ただただ憤りとともに、鳥肌が立つ思いだ。
(匿名投稿)






いただいた意見の標題=「規制改革」という自己目的化しやすい魅力的な言葉には注意すべき
(2016年10月09日掲載)

 9月14日付朝日新聞によると、規制改革推進課意義の委員の一人は「既得権益者を打ち破り、構造改革を進める過程に意味がある」と説明している。直接、その委員本人に聞いたわけではないので、発言の確認を行うことはできないが、この記事を読んで、ああやっぱりそうか、と思わざるをえなかった。予想どおりとはいえ、この言葉は、規制改革会議にとっては規制を改革すること自体が目的であり、規制改革により実態経済にどのような影響が出るかは二の次であることを如実に示していると思える。

 この記事では、「規制見直しの当面の『目玉』が見当たらない中で、生乳流通の見直しに道筋をつけ、構造改革の実績をいち早く示す狙いがある」ともされている。やはり改革の結果はどうあれ、政治的な目玉作りが目的なのだろうか。組織の名前がその目的を示すとおり、規制を改革すれば、規制改革会議にとっては大きな得点となるのは間違いない。組織の存在意義は、規制改革を実行することにあるからだ。

 規制改革というと、多くの人は漠然とかっこいいことだと思うに違いない。守旧派あるいは抵抗勢力の既得権益をぶっ壊し、新風を巻き起こして経済の活性化を図る。日本でも海外でも「改革」や「Change」という魅力的な言葉に踊らされている人々はたくさんいる。大手マスコミとて、改革ないし改革派というときは、それが無根拠・無批判に善であり、正義派と同義に用いられているように見える。改めて説明を要しない国民受けする言葉は、マスコミにとって都合がいいので、特に注意が必要だ。(注:冒頭引用した朝日新聞がそうだといっているわけではない)

 我々は生きていく上で、様々な規制の中で暮らしている。しかし、そのほとんどの規制に対しても、我々は全く意識さえすることなく暮らしているはずだ。身近なものでは、安全で公平な生活を営むため、交通規制、各種年齢規制、税制なども我々の生活に制約を強いているが、その様々な規制をまるで空気のようにほとんど意識せずに当然のこととして受け入れ、暮らしているのが「普通の姿」ではないか。

 私たちが安全で快適な暮らしを営むために、一定の規制は必要不可欠だとは思う。しかしそれが「規制改革だ」と一言というと、冒頭の委員発言報道が見られるように、既得権益者の持つ壁を打ち破るイメージ、言い換えれば、当然なすべきことというイメージだけが先行しがちだ。しかしその前にそれが必要な規制であるのか、あるいは不必要な規制であるのかを検討すべきだろう。まずは歴史的経緯や諸外国の先行事例などを参考に、冷静に検討してみる必要があるだろう、と考える。

 今回の規制改革会議における議論の経過をみていると、初めから結論ありきで、規制改革会議のタイムスケジュール感に沿って、どうしてもその結論に結び付けていこうとしているようにしか見えない。おそらく、これまでの報道をみる限り、規制改革会議と大手マスコミは規制改革に関してはコラボしており、その成果を強調する準備ができているように見える。その報道の中には「政府の唱える改革」に対し、眉につばする批判精神は微塵も見えない。(匿名投稿)


いただいた情報の標題=バター不足は本当なのか?。
(2016年10月03日掲載)

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 岡山県内の酪農乳業関係の方でしょうか?。なお本ブログは、新聞の日付とバターの賞味期限に関する、投稿者の意図を明確に確認しておりません。また無用な買いだめを奨励するものではありません。(管理者)











         
プロフィール

酪農乳業関連制度研究会

Author:酪農乳業関連制度研究会
 私たちは、規制改革会議による指定生乳生産者団体制度に関する提言等について、ある雑誌の特集に様々な立場から論考を執筆した者及びその特集内容に共感する有志です。
 特集では、それぞれに立場は異なるものの、一致して規制改革会議の運営の仕方や提言等について根本的な疑問を共有していることがわかりました。このため、関係者ばかりでなく一般の方々にも、私たちが何を問題としているのかを理解していただきたく、意見を表明することとしました。

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