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規制改革会議・指定生乳生産者団体制度改革論議を糺す

 平成28年9月2日
          規制改革実施計画の推進に対する意見

酪農乳業関連制度研究会
共同代表 東京大学 矢坂雅充
共同代表 京都大学 新山陽子
 本年5月に公表された規制改革会議の答申において、指定生乳生産者団体(以下「指定団体)については、「指定団体の是非や現行の補給金の交付対象の在り方を含めた抜本的改革について検討し、結論を得る」とされており、また、本答申の1ヵ月前の4月に公表された提言には、指定団体制度の廃止等が盛り込まれています。
 規制改革会議の答申・提言は、一昨年のバター不足問題の原因を酪農の「指定団体制度」に求める結論となっています。しかし、指定団体改革が進展するまでもなく、課題とされたバターの需給事情や酪農家の所得は現在、既に大きく好転しています。このことは、規制改革会議で展開された議論が、果たして的を射ていたのか、大きな疑問を投げかけるものといえましょう。
 一方で、日本の酪農・乳業の産業実態とかけ離れた議論が行われた結果、規制改革会議の「指定団体制度の廃止」提言に基づく改革を、仮に、提言のとおりに行えば、規制改革会議がいう「酪農家の所得向上」という目的とは裏腹に、酪農家の所得は全国的に低下し、また消費地から遠くにある主産地を中心に生産は縮小し、ひいては乳業をはじめとする関連産業の衰退も懸念されると考えます。この結果、消費者に安全でおいしい国産のバターをはじめとした牛乳乳製品の安定的な供給に、より一層支障をきたすことも懸念されます
 酪農を基礎産業とした関連産業に従事する人々には、国民に対して国産の安全な牛乳乳製品を安定的に供給する責任があります。このため、今秋までの結論を求めた実施計画の推進に当たって、規制改革会議による議論の不備を是正した偏りのない公正・公平な論点の再検証を行うよう強く求めます

 提言の中には数多くの問題があると認識していますが、ここでは4つの論点に絞って、その理由について簡潔に説明します。 (※ この「意見」に関する補論など、関係記事の一覧はこちらへ。)

1 規制改革会議の委員構成の問題点
 規制改革会議では、牛乳・乳製品の生産・流通等に関する規制改革のような専門的な事項については、農業ワーキンググループ(WG)において議論される仕組みとなっています。しかしながら、農業WGには牛乳乳製品の生産・流通に関する豊富な知見を有する委員はたった1名に過ぎないばかりでなく、事務局にも全くいません。
 このような委員構成の中で議論されれば当然予想されるとおり、規制改革会議の提言は、当該委員の考え方そのものであると理解しています。言い換えれば、全国1万7千戸の酪農家と関連産業従事者の命運を左右する重大な改革が、たった1人の専門家の意見によって決められた経過となっています。しかし、「提言」のとおり改革(指定団体の廃止)を実行した場合、どうして規制改革が目指す目的(生産基盤の維持・回復、酪農家の所得向上)が果たされるのか、国内酪農・乳業で専門的な実務を担う関係者の圧倒的多数が「その論理を全く理解できない」という異常な状況となっています
 私たちは、このような重要な制度の改正の検討を行う場合、当然のことながら、牛乳乳製品の生産・流通に関する豊富な知見を有するバランスのとれた複数の学識経験者や、制度の改革によって大きな影響を受けるであろう当事者も委員に加え、「現実に即した」幅広い議論を行うべきと考えます

2 ヒアリングの対象者選定の問題点
 上記のような事情を背景に、規制改革会議の「提言」は、ほとんどの関係者が共有する主流(サイレント・マジョリティ)の意見とは異なり、また産業実態のバランス上からも著しく偏った意見を無条件、無批判に重用した「偏向」を生じています。
 私たちは、このような重要な制度の改正の検討を行う場合、当然のことながら、関係者が共有する主要な意見の割合に十分に配慮し、バランスよく幅広い意見を聞いた上で慎重に判断すべきものと考えます

3 目的とは真逆の結果が予想されるという問題点
 私たちが最も問題ありとするのは、規制改革会議の提言が酪農や牛乳乳製品の生産・流通の実態面をあまねく理解しているわけではないたった1人の委員の意見のみを反映して決められた結果、提言がどのような影響を実態経済面に及ぼすことになるのか十分に評価・分析されていない点です
 生乳を生産するほとんどの酪農家も、生乳を購入して牛乳乳製品を生産・販売するほとんどの乳業者も共通して、提言のとおり改革を行えば、規制改革会議がいう目的とはまったく反対に生産は縮小し、酪農家の所得は低下するとみているという事実を「深刻に受け止めていただきたい」と思います
 提言のとおり、既存の指定団体より高い乳価で生乳を販売したいという生産者が新たな指定団体のような組織を自由に作れる仕組みとした場合、消費地や飲用牛乳工場から遠くにある主産地(加工原料乳地域や離島等)の生産者ほど輸送コストがかさむため不利になり、地方創生どころか地方における離農が加速化するものと考えられます。加えて、価格の高い飲用市場に需要を超えた生乳が流れ込むことから、飲用乳価は当然低下すると予想されます。それは、とりわけ都府県における生産の縮小を加速させ、消費者にとっては「一時的に」牛乳価格の低下という恩恵をもたらしますが、国内酪農の縮小を加速させる結果、国産のバターなどの乳製品の供給にも深刻なダメージを与えかねません。
 また、指定団体は、天候、季節、学校給食の有無などにより生産も需要も日々変化する中で、乳業者との協力の下、地域的にも過不足が生じないよう生乳の需給調整を日々行いながら消費者に安定的に牛乳乳製品を供給する重要な役割を担っていますが、この重要な機能が発揮できなくなるおそれがあります。
 与党である自民党は、昨年、酪農家の所得を向上させるという同じ目的のために、農水省をはじめとする関係者から意見を聴取の上、規制改革会議とは真逆の生産者組織の再編統合・強化を推進する旨のとりまとめを行い、今まさにその推進中にあります。この制度をめぐる、国の中枢での議論の結果が「制度廃止」と「制度強化」の両極端に分かれている現状は、この制度に関する議論が十分に尽くされておらず、国民・消費者の「利益」に対して、真摯な方向性が定まった状況とは程遠い事実を如実に物語っているものと考えます。
 (※「3 目的とは真逆の結果が予想されるという問題点」の詳細はこちら

4 提言は生産者間の不平等を助長するという問題点
 指定団体について、生乳販売市場を独占しているとの誤解があります。すなわち、生乳を生産すれば、高い飲用向けで売れない分は安い加工向けに回す必要があります。その加工原料乳の価格面での不利性・リスクに対し、政策的な支援を求める生産者が「自由意志」により指定団体を構成し、リスク負担を参加農家全体で平等に分け合うシステムが指定団体による生乳の共販体制であり、それを補うために補給金が交付されています。このようにほとんどの生産者が価格面での不利性や過剰時における減産のリスクを含めて加工原料乳の供給を引き受けるからこそ、いわゆるアウトサイダー(指定団体による生乳共販に参加しない、自由取引農家)の生産者は飲用向けに限定した販売が可能となり、高い乳価を享受しているのです。
 規制改革会議の提言は、このような指定団体の需給調整及び傘下の生産者の負担に依存し、飲用向けに限定して生乳を販売し高い乳価を享受している生産者にも補給金を交付するようにせよという内容ですが、これではリスク負担を負わぬ者に国費でリスク補填を行うという意味で、生産者間の不平等を助長する制度を政策的に構築することになります。いわば保険の掛け金を払わぬ者にも保険金を払えと、保険会社に命じるようなものだといえるかもしれません。これが経済合理性・政策合理性を有するものだといえるでしょうか。
 飲用向けと加工向けの乳価をプールし、同一地域内の生産者の乳価を平等にする制度は日本に限ったものではなく、自由主義を標榜する米国やカナダでもほぼ同様の制度となっています。言い換えれば、生乳の腐敗しやすいという商品特性を反映して、世界的には、同一地域の生産者の乳価を平等にするのがイコールフッティング(競争を行う際の諸条件を平等にすること)だということです。EUの直接支払い制度を過度に礼賛する論調も見受けられますが、EUでは国際的な需給変動とともに、数年おきに酪農家が暴動やデモを繰り返しており、近年では、日本における指定団体制度にも似た「新たな生乳共販制度」を模索する議論も活発化している現実があります。(※「4 提言は生産者間の不公平感を助長するという点」の詳細はこちら)




「酪農乳業関連制度研究会」について

 私たちは、酪農乳業関連制度に関する研究を行う者及び酪農乳業関連産業に従事する者の有志による組織横断的な連携によって、この「議論」の正常化を目指すことを目的に、このブログを立ち上げました。
 このたび、「農業と経済」(昭和堂)2016年9月号において、同誌から「規制改革議論の現場と実像」―第1部・生乳流通再編をどうみるか―と題する特集が掲載され、その執筆者とともに、特集内容に共感を有する有志により構成されています。
 当該特集では、事前の打合せもなく、研究者、生産者、乳業者、消費者等それぞれに異なる立場から自由に論考などを行いました。
 ある程度予想はしていたものの、結果として同誌が発行されてから判明したのは、それぞれの異なる立場を超えて、共通して規制改革会議の提言・答申に大いに疑問を呈する内容になっていたという事実です。
 そこで私たちは、規制改革会議自体、会議の運営の仕方、及び提言の抱えている根本的ともいえる問題点について、一般の方々にもご理解いただけるように論点を4つに絞って「規制改革実施計画の推進に対する意見」としてとりまとめ、公表することとしました。大手マスコミが酪農乳業に関する基礎的な知識を踏まえた正確で客観的な報道を行わず、農業・農協一般に対してよく用いられる的外れでステレオタイプな論評しか掲載しない中で、酪農乳業関連産業従事者はもちろんのこと、少しでも多くの心ある一般の方々にも規制改革会議やその提言等の何が問題なのかをご理解いただけることを願うものです。
 私たちは、規制改革会議における議論、提言等について逆に検証するとともに、私たちのもつ当然の疑問に対して、規制改革会議に説明責任を果たしていただきたいとも考えています。
 みなさまには、私たちの意見をご一読いただき、自由にご意見をなど寄せていただければ幸いです。
 また、賛同していただける方は、是非「拍手!」をクリックしてください。さらに、強く賛同される方は、賛同者の一員として是非、名前を連ねていただくよう期待しています。名前を連ねていただける方々には、コメント欄に職業又は企業名、役職、氏名などをご記入いただければ幸いです。


酪農乳業関連制度研究会
共同代表 東京大学 矢坂雅充
共同代表 京都大学 新山陽子










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記事更新情報(2016/11/14)



記事更新情報(2016/11/14更新)

2016年11月14日
 当研究会の会員にも名を連ねていただいた、北海道大学大学院 農学研究院 基盤研究部門 農業経済学分野 食料農業市場学研究室の清水池義治 講師より、現在の指定生乳生産者団体制度改革を考えるポイントを整理した「資料」のご提供をいただきました。
 こちらのページで、清水池先生から当ブログ読者に向けて寄せられた文章とともに、資料「指定生乳生産者団体制度改革をどう考えるか」のPDFファイルデータを読者にご提供します。


2016年11月13日
 このブログにも概要を収録していますが、酪農乳業界の関係者が10月前半に行った、英国におけるMMB制度改革の視察調査結果に対し、株式会社MMJが自社ホームページ上に掲載しているコラム「結果ありきの調査団報告」に関し、研究会の会員から当該コラムにおける複数の「事実誤認」に関し、反論コメントが寄せられましたので、新記事「英国の制度廃止の影響に関するMMJの言説は事実に反する」として掲載しました。

2016年10月25日
  「解説」カテゴリーに新たな記事「指定生乳生産者団体制度の改革論議に『よく出る言葉』について」を掲載しました

 順次、掲載内容を追加していた、「制度理解の前提として考えるべき『酪農の事情』」の全文アップが完了しました。 

2016年10月20日
 酪農乳業関係者が、日本の指定団体制度改革の「先進事例」となる、英国の生乳取引制度改革の現状に関し、現地調査を行ったそうで、同行した研究会員から、その調査結果の概要に関する報告が寄せられました。「この改革論議は『英国の轍を踏むもの』ではないのか」との標題で、この全文をアップいたしました。 
 
 また、「制度理解の前提として考えるべき『酪農の事情』」 も随時、内容を追加掲載中です。
 
2016年10月16日
 新カテゴリー「解説」欄を設置し、「制度理解の前提として考えるべき『酪農の事情』」の掲載を順次開始します


2016年10月09日
ブログ読者からの投稿メールより」欄に、ご意見を一つ追加しました。

2016年10月03日
「ブログ読者からの投稿メールより」欄を開設しました。

2016年09月23日
  20日より順次掲載していた「4.提言は生産者間の不公平感を助長するという点」に関する「補論」の記事アップを完了しました。

2016年09月20日
  「4.提言は生産者間の不公平感を助長するという点」に関する「補論」を順次追加中です。

2016年09月20日
  15日より順次掲載していた「3.目的とは真逆の結果が予想される点」に関する「補論」の記事アップを完了しました。
  さらに本日より、「4.提言は生産者間の不公平感を助長するという点」に関する「補論」の順次掲載を開始します。

2016年09月17日
  15日より順次掲載中の下記「補論」をさらに追加しています。

2016年09月16日
  15日より順次掲載を開始した、下記の「補論」を追加しています。

2016年09月15日 
  「規制改革実施計画の推進に対する意見」(注・トップページ掲載)に関し、「3.目的とは真逆の結果が予想される点」に関して、「補論」の掲載を順次開始します。








管理者から(2016/11/23更新)



2016年11月23日
 11月14日付で公開した、北大の清水池先生からご提供の資料(関係ページはこちら)ですが、管理者の不手際により、掲載後7日間でデータのダウンロード先とのリンクが切れておりました。新たなデータリンクを設定して、現在は再びご提供できる状態に回復しております。清水池先生ならびにアクセスいただいた読者の皆様には、大変ご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。
 リンク切断の原因は、データを保管していた無料のデータ倉庫が「7日間の期限付き」だったことを、管理者がよく理解していなかったためです。新たなリンクは使用期限がないようですので、大丈夫だと思います。

2016年11月14日
 このブログの管理を行うようになったことが機会となり、始めてTwitterを使うようになりました。この「酪農乳業関連制度研究会」の名前で、Twitterアカウントを10月末ごろに開設し、最近使い方が少しわかってきたので、ボツボツ発信をしています。フォローやRTが増えて、少しでも当研究会の考え方に理解が広がることを願ってます。

2016年11月13日
 規制改革推進会議の農業WGが、11月11日に新会議体として、本件への新たな意見をまとめた動きを受けて、このブログの記事配置を変更しています。

 このブログにも概要を収録していますが、酪農乳業界の関係者が10月前半に行った、英国におけるMMB制度改革の視察調査結果に対し、株式会社MMJが自社ホームページ上に掲載しているコラム「結果ありきの調査団報告」に関し、研究会の会員から当該コラムにおける複数の「事実誤認」に関し、反論コメントが寄せられましたので、新記事として掲載しました。

2016年11月05日
 (管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます)
 11月04日夜から05日未明にかけて、当ブログのコメント欄に、おそらく同一の投稿者と思われる3つのコメントが投稿されました。
 標題はいずれも「議事録」との同一タイトルで、政府の規制改革推進会議事務局が11月4日に公開した、10月18日開催の第6回農業ワーキンググループ会合の議事録における、一部の発言内容に対し、一つのご意見を3分割して、ご投稿いただいたものと推察しています。

 大変重要な問題を提起するご意見だと受け止めましたが、いただいた文面の一部において、投稿者の推測に基づく疑念でありながら、特定の業者名が実名表記されている部分があり、研究会内でその取扱い方を協議した結果、当該業者名を「●●」という形で伏せ字とする改変を加えたうえで、コメント欄とは別に「ブログ読者からの投稿メール」欄に掲載することとしました。

 なお、当該投稿に関しては、ブログ管理者により、投稿いただいた順に①~③の番号を付したうえで掲載しております。



2016年10月31日
 指定団体制度改革に関する都道府県議会の「意見書」へのリンクに専用ページを新規開設しました。
 併せて、酪農経済通信ブログの接続環境も「パスワード不要」に変更したため、リンクカテゴリーに移行しています。

(管理者から)
最近、有り難いことに、読者の皆様のご声援によって、ブログ脇に掲載している「日本ブログランキング」において、「9位」という評価をいただくまでに至りました。またおそらく1両日ほどで、「1万アクセス」の大台突破も近い状況となっているようです。
 今春の規制改革会議提言を受けた、当研究会からの強い問題提起を、多くの皆さんにも知っていただき、考えてもいただきたいという目的で、このブログを運用しておりますが、ブログランキングへの投票を誘導する意味も含めて、設定しておりましたパスワード付き記事等は初期の目的を達したと考え、本日をもってアクセス制限を解除することといたします。

 議論も11月、最終盤を迎える情勢であり、いたずらに制限付き記事を掲載するよりは、やはり多くの皆様に接しやすい形で提供すべきとも考えます。

 ブログの「意見や論考」に、強く賛同をいただける皆様におかれましては、引き続き、一定の目立つ順位にこのブログがとどまることのできるよう、継続的な「1票」でご声援をいただけましたら、幸いです。

 また、つい先日、遅ればせながら、この研究会のTwitterアカウントも「酪農乳業関連制度研究会」名にて開設しました。健全な公論に資することを目的とした当ブログを、やはり多くの皆さんの目に触れるものにしていきたいと念願しており、「RT」などでの拡散にもご協力をいただけましたら幸いです。


2016年10月25日
 指定生乳生産者団体制度の改革をめぐる議論が山場を迎えているからでしょうか。コメントの方にも、活発なご意見が寄せられ始めているようです。引き続きコメントを受け付けております。また長文のご意見は当研究会宛てのメールアドレスも公開しております。こちらにもご意見などをお寄せください。

2016年10月23日
 ネット上の関係報道を見ていましたら、規制改革会議の「委員の見識」をめぐる、面白い解説をみつけましたので、「このブログテーマに関連するURL一覧」に追加しました。出典は農業協同組合新聞(JACOM)様です。

2016年10月18日
 ひまわり乳業の吉澤様。コメント欄への情報提供をありがとうございました。「このブログテーマに関連するURL一覧」のページに、情報提供いただいた「東洋経済ONLINE」様の記事へのリンクを加えさせていただきました。

 また、この機会に、高取様、東山様など、実名で数々コメントのご投稿をいただき、御礼を申し上げます。

2016年10月09日
 10月06日記載の広告回避のため、内容は重複しますが、「最新記事のお知らせ」欄を新設して、問題を回避できました。
 以前、このブログにいただいた読者コメントに「一般人からすると、業界人が寄ってたかって『反対』と言っている感じがする」との意見もいただきましたが、別に業界人だけが懸念している訳ではないのではないか?、と思いまして、「このブログテーマに関連するURL一覧」ページに「都道府県議会の『意見書』」へのリンクを増設しました。ネットで検索した範囲で集めましたが、掲載漏れがありましたら、このブログ宛てメールなどでご指摘いただけると助かります。

2016年10月06日
 珍妙なご報告ですみません。このブログは冒頭に掲げる、この研究会の「意見」を最重要メッセージとする観点から、じつはブログ開設前に、事前に「下書き(非公開)」状態の空枠を複数設定し、この空枠に後日、新記事を書き加える形で運用していました。
 しかしこの結果、後日掲載した新記事の掲載日付が、当初に空枠を設定した日付になってしまい、FC2ブログのシステムのうえでは、「記事更新」扱いにならない事態になっています。
 このブログ冒頭の「意見」ページの内容が固まってから1カ月が経過した本日、FC2のシステム上の問題として、「1ヶ月間記事更新がない」という扱いにされてしまい、ブログ冒頭に勝手に大きな広告ページが入ってしまう事態を生じていることが確認されました。
 苦肉の策として本日から、内容はありませんが、暫定的な「新記事」枠を作っております。
 無料のブログを活用したための、悲しい事態なのですが、問題解決まで数日間、見苦しいですけれど、ご理解をお願いします。

2016年10月05日
 本日から「当研究会への提供情報」カテゴリーに「日刊酪農経済通信ブログ」への情報リンクページを新設しています。
 なお、このカテゴリーの記事は、下記「10月04日」に記載の通り、パスワードを採用しています。
「全酪新報」様が10月1日付紙面で、このブログをご紹介いただきました。ありがとうございます。

 パスワードは下のバナーをクリックし、本ブログの説明文からでもご確認ができます。

社会・経済ニュース ブログランキングへ

2016年10月04日
 当研究会の掲げる論点について、一般へのさらなる認知向上を目的に、ブログランキングをもう少し上昇させたいと考え、本日から「当研究会への提供情報」カテゴリーの記事の閲覧に「パスワード」を設定します。パスワードは「人気ブログランキング」をクリックいただくと、当ブログの説明文のなかに公開しています。なおパスワードは不定期に変更する予定です。

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2016年10月03日
 御礼が遅れましたが、月刊誌「DAIRYMAN」様の10月号で、このブログをご紹介いただきました。
 また「酪農乳業速報」様でも9月29日付にてご紹介をいただきました。ありがとうございます。

 
2016年09月27日
 コメント表示欄の表示順を「新着順」に変更しています。
 本日、管理者宛メールにてご意見をお寄せ頂いた北海道の酪農家・及川様。デントコーンの収穫でご多忙にもかかわらず、当方の内容確認にご対応いただきありがとうございました。ご本人のご意向を確認のうえ、一般のコメント欄に、管理者からご意見を転載させていただいております。


2016年09月23日
 本日未明にコメントをいただいた「学生さん」、大変丁寧にブログを読み込んでいただけたようで、有益な反応をいただき誠にありがとうございます。「大変わかりにくい」とのご指摘、我々も苦心している部分ですが、具体的に「どのあたりがわかりにくかったか」について、追加的なご指摘をいただけましたら幸いです。
 また「乳業の仕組み」というのは、乳業の主にどういった機能面などへのご関心か、もう一段のご指摘をいただきたいと願っております。
 改革派の主張と、それに対する反対意見の根拠を「順番にわかりやすく」というご指摘は、今後の内容の企画で大いに参考にさせていただきます。ただ本件の「改革派の主張」は規制改革会議の議事録(関連リンクから見られます)をご参照いただきたいのですが、我々にとっては、その論拠が「理解できない」というものでありまして、逆に政府から、さらなる見解を聞きたいところでもあります。
 併せてご質問の件ですが、「制度改革が現行制度以上に消費者の需要を喚起する商品開発を促す可能性があるか」、そして「現行制度が商品開発を阻害しているか」の2問という理解で宜しいでしょうか。
 いずれも今後のコンテンツの改善・追加に反映してまいりたいと考えます。


2016年09月19日
 15日に実施した当ブログのテンプレート変更にあわせて、管理者宛のメール投稿欄を公開しています。
 健全な政策論議に資することを目指す当ブログの今後の内容充実を図る観点で、当ブログで取り上げるべき論点に関するご意見、及びネット上の注目すべき関連情報の提供、公開あるいはコンテンツへの反映など意図した各種論文や解説原稿などのメール投稿を歓迎しています。
 さらにこの政策論議に関する酪農家からのご意見も受付けます。忌憚のないご意見をお寄せ頂けましたら幸いです。
 併せて制度実態に関する、乳業など酪農に関係する産業関係者、および需要者サイド、消費者団体等からのご意見等も歓迎します。

 なおメールでお寄せいただいたご意見に関しては非公開を原則としますが、当ブログ上での公開を前提に投稿いただいた論文・情報素材等については、事実関係や転載・公表に係る著作権等の法令の適合性などを管理者側で検討のうえ、今後のコンテンツの企画・検討に反映、または原文等の転載の可否などを管理者サイドで総合的に判断したいと考えます。
 よって、こうした判断に資する投稿者との投稿内容に関する協議・確認や、ブログ掲載段階での「実名」「匿名」の扱いを含め、当研究会との往復連絡が可能なメールアカウントによる投稿を原則とした受付とします。

 また本ブログの掲載内容に関連する、より詳細・正確なオフィシャル情報へのリンク等も充実したいと考えております。当ブログを経由したコンテンツ情報発信にご協力いただける組織、企業、行政機関、報道機関、研究機関も、管理者宛メールを通じてご協力をいただけましたら幸いです。また専門誌を含む報道機関からのコンテンツ提供あるいはリンク等へのご協力も歓迎いたします。

 ブログで公開中の個別記事に関する一般的な感想やご意見は、引き続きコメント欄で受け付けます。 

2016年09月16日
 09月08日の本欄で言及しました「拍手コメント」欄について、すでにご投稿いただいたコメントの掲載を再開しました。
 なお「拍手コメント」は現在、受け付けておりません。コメントのご投稿は画面右側の「最新コメント」のいずれかをクリックしていただくと、投稿画面が開きます。
 本日、Dairy Japan社のwebページでも「DJニュース」欄に取り上げていただきました。 

2016年09月15日
 画面レイアウトが原因不明にて、崩れる現象が確認されたため、改変しております。
 本日から「記事更新情報」欄を新設しています。
 コメントの投稿は、画面右側の「最新コメント」のいずれかをクリックいただきますと、投稿画面が出てきます。
 気づかず、ご報告が遅れましたが、このブログが「日刊酪農経済通信」に紹介されました。9月12日付とのことです。

2016年09月12日
 「人気ブログランキング」にもエントリーし、リンクバナーを設置しました。クリックいただけると、ランキングの向上につながります。
 既存の「FC2 ブログランキング」(注・トップページ記事下の赤いバナー)もご声援をいただけたら幸いです。

2016年09月08日
多数のアクセスとともに、「拍手」もいただき、ありがとうございます。
 その「拍手」欄における「拍手コメント」について、唐突ではありますが、扱いを変更し、「コメント」は記事ページ下のコメント欄に一元化することといたします。
 ここまでは記事下のコメント欄と併せ、「拍手コメント」でもコメントを受け付ける形となっており、「拍手コメント」欄では、すでに数件のコメントをいただいております。しかし「拍手コメント」はこの「FC2」の運用上、30件を超過すると、古いコメントが順に削除される仕様となっていることが判明いたしました。またブログ内容に賛同の「拍手」をお寄せいただいた方以外には、コメント内容が目に止まりにくい問題もあると判断したための変更です。ブログ開設初期のため、当研究会の理解不足によるもので、せっかくコメントをいただいた皆様には、ご迷惑をおかけします。

2016年09月06日
 ブログ開設早々、数々のアクセスをいただいたのをはじめ、コメントや「拍手」なども賜り、御礼申し上げます。
  トップページに「アクセスカウンター」及び「アクセスランキング」などのブログパーツを追加設置したため、ブログ冒頭の意見声明が掲載後に記事更新されたような日付となっておりますが、本文の変更は行っておりません。
 また「コメント欄」の扱いですが、6日以降、「管理者のみ閲覧」との非公開コメントに関するメッセージは非表示とし、いただいたコメントに関しては、管理者の承諾後に公表する形とさせていただきます。

2016年09月04日
 ブログを開設いたしました。なお、このブログの公開準備過程で、当初は「ameba(通称・アメブロ)」でのブログ開設を準備したものの、公開直前で、当方の期待した機能が思うように使えないことが判明し、急きょ、この「FC2」にブログ設置拠点を変更した経緯があります。現状では、旧アメブロのブログサイトも残しており、この「FC2」へリンクで誘導する形として活用していますが、今後、旧サイトは内容を改廃する可能性があります。







このブログテーマに関連するURL一覧(随時更新)



ブログテーマの関連URL一覧


指定生乳生産者団体制度改革論議に関する各種情報

☆ 専門誌「農業と経済」の特集記事の閲覧はこちら。 
   ※ なお当該紙面の無料閲覧は版元の了承を得ております。

☆ 中央酪農会議の「指定団体制度特設ページ」こちら。指定団体制度の概要等をまとめた、国内酪農中央団体のオフィシャルページです。
 
☆ 政府の規制改革実施計画(平成28年6月2日閣議決定)はこちら。本件に関する内容は11~12ページ目に記載があります。

☆ 規制改革会議による政府への提言(答申。平成28年4月8日)はこちら

☆ 規制改革会議の「農業ワーキンググループ」による、本件の最終意見(平成28年3月31日)はこちら 

☆ 指定生乳生産者団体の「基本的な実務」とは何か、分かり易い説明はこちら(中酪の指定団体制度特設ページから)。

☆ 独自の生乳販売に取り組む株式会社MMJのホームページはこちら




他のブログ等における論調はどのようなものでしょうか

ねこねこニュース様のまとめはこちら

「バター不足は何故起こるのか?」前田陽次郎様の評論のリンクはこちら

● とば吉の「農業ブログ」 様へのリンクはこちら

● 新世紀のビッグブラザーへ(作家・三橋貴明さんのブログ)様へのリンクはこちら

● 小笠原誠治の経済ニュースゼミ様へのリンクはこちら

● 気になることを調べてみましょう様へのリンクはこちら

● 琥珀色の戯れ言様へのリンクはこちら。 

●経済誌・東洋経済ONLINEで公開中の連載「バター不足」解消をめぐる不思議な規制改革」はこちら

●農業専門紙「農業協同組合新聞」のネット記事「農業WG委員『農業のことは素人』と発言」へのリンクはこちら








この改革論議は「英国の轍を踏むもの」ではないのか

 研究会の共同代表である矢坂先生をはじめ、酪農乳業関係者が日本で現在、規制改革推進会議で議論されている方向と極めて酷似した生乳流通改革の先進事例である、英国の生乳取引・流通改革の結果に関して、この10月、緊急に現地調査を行ったそうです。調査に参加した会員の方から、調査の概要報告を当研究会にお寄せいただきましたので、公開します。(2016年10月20日公開)


英国のMMB解体に関する緊急報告

1 規制改革会議提言は真逆の結果を招くことを英国で確認

 規制改革推進会議農業ワーキンググループ(WG)が、10月13日から牛乳・乳製品の生産・流通について検討を開始する中、先週、英国を訪問してミルク・マーケティング・ボード(MMB)の解体過程について調査する機会を得たので、その概要を緊急に報告します。調査はJミルクが企画し、10月10~13日、酪農乳業関係企業、団体の関係者で行ったものです。

 MMBは1933年に設立され、約60年後の1994年に解体されました。MMBの主な機能は、生乳の一元集荷多元販売とこれに伴う生乳の需給調整、生乳流通の合理化、さらには乳業者との交渉による用途別生乳価格の決定、生産者へのプール乳価での支払いなどであり、日本の指定団体の有する機能とほぼ同じと言っていいでしょう。

 したがって、英国のMMBの解体は、日本の指定団体から指定をはずし、新たな組織の設立を自由に行えるようにすることとほぼ同様の規制緩和対策でした。その結果、英国の酪農家、乳業メーカー、そして小売業にどのような影響を及ぼしたのかを検証すれば、規制改革会議の提言が日本の酪農乳業にどのような影響を及ぼすことになるか、ほぼ予測することができるものと思われます。

 なお、英国で生産される生乳の約50%は飲用に仕向けられ、自給率は80%強と、ヨーロッパの中では最も日本の市場構造に近似しています。

 今回の調査で得られた英国における規制緩和対策の結果を順不同で箇条書き風にまとめれば、次のようになります。
1 用途別乳価が維持できなくなり、単一乳価に
 MMBによる一元集荷多元販売・需給調整の機能が失われたことにより、用途別取引が維持できなくなり、飲用向け・加工向けなどの用途別格差のない単一乳価となった。
2 酪農協を設立したものの、酪農家の離脱が加速化
 MMBの解体に伴い、その後継組織として酪農協が設立されたものの、一元集荷多元販売という独占力を失ったため取引乳価は次第に低下し、それに伴い生産者の酪農協からの離脱が加速化していった。酪農家の離脱により酪農協の競争力はさらに低下し、取引乳価が低下するという悪循環に陥った。
3 商系乳業メーカーは工場近隣の酪農家から生乳を調達
 生乳流通(輸送)コストのプールがなくなり、用途別の乳価格差もなくなったこと、さらには生乳を安定的に確保するため、商系乳業メーカーは飲用乳向け・加工向けにかかわらず、直接取引等により近隣の酪農家から生乳を調達するようになっていった。(注:現在、約6割が直接取引)
4 乳価は急落し長期低迷
 酪農協により提案された契約タイプ別の乳価形成方式により約2年間はそれまでの飲用向けの乳価水準を維持できたものの、その後乳価は急落し、最も低いバター・脱脂粉乳向けの加工乳価水準にまで低下し、常態的に張り付くようになった。しかも、その低下幅は大きく、わずかの期間に3割以上もの低下を示した。
5 小売価格は下がらず、酪農家の生乳販売価格だけが低下
 乳価は加工向けの下限値水準まで低下したものの、飲用牛乳の小売価格は下がらなかった。乳業メーカーの取り分にも大きな影響はなかったことから、結果的に、酪農家の所得が小売業に移転されただけという結果となった。

 以上のとおり、MMBの解体という規制改革により、英国の酪農家の所得は大幅に低下し、酪農経営の将来性を悲観した酪農家の離農が加速しました。乳業メーカーの過半が外国資本に置き換わり、消費者ニーズに応じた生産どころか、酪農乳業を小売業が支配する体制が出来上がってしまったというのが、酪農家や乳業団体関係者の声でした。その上で、彼らは自らの苦難の経験を踏まえて、日本は英国と同じ轍を踏むべきではない、との強いアドバイスをいただいたことを読者や規制改革推進会議の委員の皆様に伝えたいと思います。

 英国におけるMMBの解体という規制改革は、ほぼ3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」に関する補論で詳述したとおりの結果であったといっていいでしょう。推測のみで空理空論を述べたわけではないことが事実によって証明されたものと思っています。以前の「規制改革会議」では、生乳の生産・流通の大宗を担う実務責任者の真摯な意見に十分に耳を貸すことはなく、このような他国の先行事例を調査・分析し、提言から予想される結果について検証することも全くありませんでしたが、名前を改め新たに設置された「規制改革推進会議」においては、真摯に対応していただきたいと思います。規制改革推進会議の賢明なる委員の皆様には、全国の17千戸の酪農家と関連産業の命運を左右する大きな改革について検討しているのだという責任感の重さを改めて認識していただき、慎重に検討していただくよう切に願うものです。


2 英国の酪農乳業関係者は、MMBの下での安定した生産や経営の方が望ましい、日本は英国の轍を踏むべきではないとの考え

 ここでは、今回の調査を通して聞いた、英国の酪農乳業関係者の生の声を紹介したいと思います。

Dairy UK (英国の乳業団体 政策部長)ピーター・ドーソン氏
 MMB解体の動機のひとつとして、英国の酪農家は他のEU諸国の酪農家よりも利益を得ていないのではないか、という一部の酪農家による不満があった。他方、乳業者側は、制度の変更の必要性はないとの立場であった。生産者が求めていたのはMMBをなくすことではなく、乳業者側の交渉相手であるDairy Trade Federationによる独占交渉の権限をなくしたいというものであった。それが実現できれば、加工向けも含めて、生乳取引価格は最も高い飲用向け乳価水準に引き寄せられるに違いないと見込んでいた。しかしながら、結果は全くの逆で、最も価格の低い加工向けの乳価水準に張り付くこととなってしまった。
 MMBの一元集荷多元販売の権限が失われたとから、用途別乳価は維持できなくなった。生乳は単一乳価となり、国際商品市場などの影響を強く受けるようになり、短期間に3割以上も急落した。加工向け水準にまで低下した乳価は、2007年に乳製品の商品市場価格が急騰するまでの約10年もの間、低迷したままだった。その後も短期間に大きな変動を繰り返しており、ミルクサプライチェーンの安定という点で、消費者にも、小売業にも、乳業にも、そして酪農家にも、望ましい姿にはなっていない。
政府は「競争を促し酪農と乳業の体質を強化する」ことを目指したが、英国の乳業者の過半は外国資本に市場を明け渡してしまった。MMBは基本的に間違ってはいなかった。生乳流通も効率的であった。こうした経験を踏まえると、今でもMMBが望ましいシステムであったと考えている。

酪農家(ヨーロッパ農業者連盟酪農委員長)マンセル・レイモンド氏
 (ウェールズ・ペンブロークシャーで620頭の乳牛を飼養、農地1500ha)
 MMBの解体を進めた要因のひとつが生産者にあるのは確かであり、自分も若かったのでそうすべきだと思っていた。しかし結果はまるで違っていた。生乳の生産・流通に関する基礎的な知識が足りなかった。MMB解体以降、乳価の国際商品市場との連動性が強まり、酪農経営は極めて不安定となり苦労した。乳業は北欧のアーラフーズに買われてしまった。比較的安定している飲用市場への酪農家の生乳出荷志向が強まり、小売業からの影響を強く受けるようになった。結果的には、酪農家も乳業も市場からの強い支配を受け、産業としての体質は弱まっている。
 本当に日本の酪農を守りたいならば、日本は英国と同じ過ちを繰り返してはならない。酪農の産業的特質を政府に理解させる必要がある。当時、自分も含め、英国の若い酪農家は、新しい変化に対して希望を抱いたのは確かである。しかし、結果的には小売業の強い影響を受ける構造になってしまい、酪農経営の自立性は弱まってしまった。

酪農家(農家民宿も経営)ドナルド・タイソン氏
 (イングランド・チェスター近郊で300頭の乳牛を飼養、農地200ha)
 9年間の実習等を経て、約30年前にリース方式により新規就農した。それからまもなくしてMMBの解体があった。MMBが解体されて2年間は乳業メーカーによる生産者の囲い込み(直接取引)もあり、高い乳価が維持された。しかしながら、その後乳価は急落し、世界的に商品市場価格が回復するまでの何年もの間、乳価は低迷したままだった。もし、妻が教師としての農外収入を得ていなかったなら、そして馬が高く売れなかったなら、酪農を続けることはできなかったかもしれない。近隣の酪農家も経営に苦しみ、多くの仲間が去っていった。収入を確保するために増産すると、さらに乳価が下がるという悪循環に陥った。MMBの解体(権限喪失)により酪農家の所得は減少し、生産基盤は弱体化し、消費者ニーズに応じた生産どころか、酪農家は乳業メーカーや小売業の下請け、言いなりになってしまった。
 酪農は他の農業に比較しても変化への弾力的対応に限界がある。乳牛を増頭したり飼養技術を変えたりして経営革新を行いたいが、その効果を出すには3年以上はかかる。しかし、現状のように乳価が変動し経営が不安定な状況では、経営計画を立てることが難しく、投資ための融資も受けられない。どんなに意欲的な経営者でも、変化に極めて弱いという酪農生産や生乳流通に特有の構造的課題に対処できなくなる。
これまでの経験を踏まえると、MMBは最も安定した望ましいシステムであり、可能なら今からでも戻すべきだと思う。価格が安定 して見通しが立つので、投資がしやすく、銀行も融資してくれる。日本は英国の轍を踏んではならない。


3 MMBと指定団体の相違点

 1では、英国のMMB解体による影響が、ほぼ3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」に関する補論で詳述したとおりの結果であったとしましたが、厳密にいえば、用途別乳価が維持できなくなり単一乳価になるなど、異なる点もありました。それは、英国のMMBと日本の指定団体では、いくつかの点で機能などが異なることが原因だと思われます。具体的には次のとおりです。

 第1に、MMBは域内で生産されるすべての生乳について一元集荷多元販売する権限を付与されているのに対して、指定団体への参加は酪農家の自由意思に委ねられているという点です。このため、日本の酪農家の指定団体への参加率は約97%となっています。

 第2に、MMBの一元集荷多元販売は地域内完結型であるのに対して、指定団体は他の指定団体の管轄する地域の乳業メーカー(工場)に生乳を販売することができるという点です。このため、隣接する地域同士の指定団体間などでは、乳業メーカーへの生乳販売をめぐる競争が行われています。

 第3に、MMBの下では用途別取引により飲用向け・加工向けの乳価が異なりますが、指定団体においては用途別に乳価が異なるだけでなく、加工原料乳には補給金が交付されるという点です。このため、飲用向け市場に限定して生乳を販売しようとする生産者との実質的な乳価の格差が小さく、需給調整のリスクや加工原料乳の価格面での不利性を負担する指定団体への酪農家の参加率の維持に貢献しています。

 以上のとおり、英国のMMBが極めて厳格に生乳を管理していたのに対して、日本の指定団体の方が規制は緩やかであり、指定団体と指定団体に参加しない生産者との間や指定団体間で、一定の競争が行われている点が異なっているといえます。また、補給金については、生乳の需給調整のリスクと加工原料乳の価格面での不利性を補うものとして交付されているものですが、大手マスコミなどで報道されているように、補給金がほしくて指定団体に参加している生産者はほとんどいないと思われます。アウトサイダーの生産者が飲用向けに限定して生乳を販売することにより高い乳価を享受しているのに対して、インサイダーの生産者は、加工原料乳の生産と需給調整を引き受ける結果として補給金が交付されているに過ぎず、それでもアウトサイダーの生産者よりも手取り乳価がやや低いというのがほとんどの酪農家の認識ではないかと思われます。

 制度としての安定性から言えば、新しい組織ができて補給金の交付対象となることよりも、むしろ新しい組織が需給調整の義務を負わないことの方がより問題は大きいのではないかと考えられます。現行の指定団体は、酪農家が自由意思により結束し、互助精神により需給調整の義務を自主的に負っているため、仮に新しい組織ができて飲用市場を侵食するようになったとしても、需給調整と用途別取引を維持すべく努力するものと思われます。したがって、英国のようにすぐに用途別乳価が維持できなくなり、単一乳価になることはないかもしれません。しかしながら、既存の指定団体からクシの歯が欠けるように、酪農家が新しい組織を設立あるいは新しい組織に移行しはじめれば、既存の指定団体がそのしわ寄せをすべて引き受けて需給調整を維持することは困難となり、用途別乳価も維持できなくなると考えられます。このため、早晩、英国のように単一乳価に向かうことになるものと想定されます。ここで留意すべきは、単一乳価となれば、加工原料乳に限定した補給金という考え方そのものが意味をなさなくなる点です。これだけでも様々な混乱が予想されます。








3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」に関する補論



 望外に多数のアクセスとともに、様々なコメントをいただきありがとうございます。
 私たちの意見に賛成であれ反対であれ、実体経済に大きな影響を及ぼす制度改革を行うならば、現実に即した幅広い議論が必要であると考えます。酪農(生乳生産額7千億円)、乳業(牛乳乳製品生産額2兆2千億円)というダイナミックな産業は、特定の仮説を試行する社会実験の場としては経済規模が大きすぎます。制度改正を行うならば、実務に責任を有する関係者の意見をよく聞いた上で、制度改正により影響を受けるであろう関係者のだれもが納得できるよう、実態経済面への影響について慎重な検証・分析を踏まえて行うべきであると考えます。
 このブログが、規制改革会議では残念ながら実現できているとは思えない、偏りのない公正・公平かつバランスの取れた真摯な議論の場となり、規制改革会議のあり方や提言、規制改革実施計画などの方向性を、真に日本の酪農の発展に資するものに見直すきっかけとなることを切に願っています。
 ここでは、可能な限り簡潔を旨とした、ブログトップページ掲載の「意見」では十分に触れることのできなかった3「目的とは真逆の結果が予想されるという点について、「農業と経済」における論考などを踏まえ、以下に順次、やや詳しく触れてみたいと思います。


3 「目的とは真逆の結果が予想されるという点」

1  酪農生産適地が輸送コスト面から不利に

  ここでの議論の前提として、生乳は用途別に価格が異なっており、その中でも飲用乳価が最も高くなっている理由について理解する必要があります(注:飲用向け乳価 約115円/kg、バター等の加工向け乳価 約75円/kg)。飲用乳価が最も高い水準で維持されているのは、生鮮向け(野菜や果物など)が保存性の高い加工向け(漬物向けや果汁向け)よりも高いという食品一般に共通する需給面での理由のほか、指定団体が乳業メーカーと連携・協調して用途別の需要に応じた的確な配乳を行い、飲用向けへの生乳供給を需要に応じた水準に調整しているからです。スーパーで牛乳の売れ残りをほとんど見ることがないのはこのためです。

  このような中で、規制改革会議において議論されているように、指定団体制度を抜本的に見直して、既存の指定団体より高い乳価で生乳を販売したいという生産者が新たな指定団体のような組織を自由に作れる仕組みとした場合、どのようなことが起こるでしょうか。この場合、消費地に近く、かつ、飲用牛乳工場に近い地域で生乳を生産している酪農家・新組織ほど有利になるはずです。なぜなら、最も乳価の高い飲用向けに限定して生乳を販売することができることに加え、輸送コストも安く済むからです。

  他方、北海道の道北など消費地から遠くて近隣には乳製品工場しかない地域や、鹿児島県の種子島のように離島のため生乳輸送コストが高くならざるを得ない地域の生産者はどうなるでしょうか。考えるまでもなく、そのような地域で酪農を営む生産者は圧倒的に不利になります。例えば道北の場合、近くには乳価の安い乳製品工場しかありませんし、離島の場合、乳価の高い飲用牛乳工場には相当のコストをかけて海を越えてまで運ばなければなりません。このため、このような地域での生産は衰退に向かうでしょうし、結果的にバターなどの乳製品の生産も減少し、都市近郊酪農だけが生き残る事態ともなりかねません。

  一方、輸送コスト面などに大きな不利を抱えるこれら地域は土地条件の制約が比較的少ないため、経営規模の拡大や自給飼料の生産にも適しています。また、都市部や住宅地から離れ、広大な農地を利用した自給飼料生産には、家畜排泄物を堆肥として有効に活用することにより環境問題による近隣住民との軋轢も少ないため、酪農生産の適地といっていいでしょう。都市近郊での畜産環境問題の発生を抑制するため、政策的にもこのような適地での生産を一貫して推進してきたはずですが、このような政策の大きな流れとも矛盾してしまいます。


2 都市近郊酪農には、飲用向け生乳の供給過剰によって乳価の低下圧力がかかる

 それでは、都市近郊酪農は得をするのでしょうか。議論を単純化すると、多くの生乳が最も価格の高い飲用向けでの販売を目指して集中し、指定団体による生乳の用途別需給調整が機能しなくなればどうなるか、ということです。

 現在、生乳の国内生産は約740万トンで、飲用向けが約400万トンですが、この400万トンの飲用向け市場に、次第に740万トンの量的な圧力がかかることになります。この場合、需要(市場の必要量)を超えた生乳が飲用市場に流れ込むことから、飲用向け生乳の供給が大幅に需要を上回り、飲用乳価は当然低下するでしょう。指定団体による用途別の需給調整が行われなければ、需要に対して生産が大幅に不足しているといわれる現状においても、飲用向け生乳は供給過剰になってしまいます。

 いわゆるアウトサイダーの生産者が飲用向けの高い乳価を享受できているのは、皮肉にも、指定団体によるこのような需給調整のお陰で、他の用途よりも飲用向けの乳価水準が恒常的に高い市場が創出されているためです。しかも、指定団体傘下の生産者が、飲用に仕向けられなかった生乳について、加工原料乳の価格面での不利性や過剰時の生産調整(減産)のリスクを引き受けているからでもあります。

 したがって、規制改革会議の中で議論されているように、既存の指定団体より高い乳価で生乳を販売したいという生産者が新たな指定団体のような組織を自由に作れる仕組みとし、その新たな組織が飲用牛乳工場に近いなどのメリットを活かして飲用向け市場に割り込めば、そのしわ寄せはすべて既存の指定団体とその傘下の生産者が受けることになります。


3 さらに、飲用として売れない余乳が生産者の足を引くことに

 他方、指定団体による日々のきめ細かな需給調整が行われなくなると、飲用市場に国内生乳が集中する結果、乳製品工場が極めて少ない都府県の消費地域では、飲用向けの需要を超えて行き場を失った余乳がゲリラ的に発生することになりかねません。つまり前述した「飲用市場への生乳の集中」の次には、「売れなかった飲用向け生乳が、踵を返して数少ない乳製品工場に向かう」事態が生じることになります。

 指定団体制度が機能している現在は、各地域の指定団体と全国連との連携によって合理的な集送乳がなされ、余乳はコストの観点からも最適と考えられる乳製品工場(北海道を含む)でバターなどの乳製品の生産に仕向けられています。しかし、それができなくなると、乳製品工場の少ない都府県で行き場を失い、生乳(余乳)が廃棄されるリスクも高まると予想されます。なぜなら加工原料乳を支援対象とした現行制度が、半世紀に及ぶ歴史を通じて、この制度の下で最も効率的な産業機能配置の観点から、消費地に遠く生乳生産が豊富な北海道へと乳製品の加工処理機能の集中を誘導し、逆に消費地である都府県では乳製品工場が数の上でも加工能力の上でも極めて小さいものへと縮小に導いていったためです。

 さらに、現行制度の下では北海道で乳製品向けに供給されていたはずの生乳の一部が都府県に向かう結果、北海道内で乳製品向けの生乳が不足し、道内の乳業工場の操業効率が低下する展開も予想されます。そもそも産業の「基本」として、北海道などのように大消費地から遠い地域で生産された生乳は、牛乳よりも保存性の高い乳製品に加工して、供給の時期や量を調整しつつ大消費地に供給することが合理的でもあります。

 このように需要を超えて飲用市場に生乳が集中する結果、行き場を失った生乳が仮に廃棄を免れたとしても、余乳として応急的に委託加工された乳製品は品質が著しく劣ってしまうため商品としての価値が低く、割り増しコストも要しているため生乳に換算した価格は通常の加工向けの価格とは比べようもないほど低いものとなります。しかも、メーカーはこのような乳製品を在庫として持ちたがらないため、委託加工した乳製品は生産者側の引き取りが条件となるケースがほとんどです。


4  そして、生産者も消費者も得をしない世界へ

 結果的に、先に述べた飲用向けに生乳が集中することによる乳価の低下とあいまって酪農家の所得は低下し、バターなどの乳製品の生産も少なからず減少するものと思われます。

 このように、バター不足に端を発して、それとは無関係の指定団体制度を廃止すれば、規制改革会議のいう目的(生産基盤の維持・回復、酪農家の所得の向上、バター不足の解消)とは全く反対に、主産地を中心に生産は縮小し、日本全体の酪農家の所得は減少し、バター不足の解消どころか、不足に拍車をかけることにもなりかねないと考えています。

 読者の皆さんにご理解いただきたいのは、規制改革会議の提言が出たとき、実務を担っている関係者が口をそろえて「そんなバカな理屈があるものか」と一刀両断にし、あまりの見当違いに苦笑していたという事実です。第三者委員会が流行のご時勢ですが、「餅は餅屋」という言葉を軽視してはいけません。


5 バター不足の原因と指定団体の機能について(補足説明)

 ここで上記の補足的説明として、バター不足の原因と指定団体制度についても簡単に触れておきましょう。

 まず、バターの不足ですが、これは牛乳乳製品の需要に対して生乳生産が不足したために生じたものです。そのための対応策として国家貿易制度によるバター等の乳製品の輸入という仕組みが措置されています。残念ながら、一昨年は、国家貿易制度の運用が量とタイミングの点で十分に適切でなかったために、小売店頭においてバターの不足という現象が生じてしまったのでしょう。また、このことがマスコミによって報道されたことが消費者の買い急ぎを誘発し、不足に拍車をかけてしまった面もあるのではないかと思われます。

 次に、指定団体制度ですが、指定団体にはさまざまな機能があります。基本的な機能は、生乳の需給調整、生乳流通の合理化、そして生乳販売面における価格交渉力の強化でしょう。いいかえれば、需要に応じた生乳生産(需給逼迫時には増産に努力)と合理的な集送乳を通じて酪農経営の安定と所得の向上を図ることを主な目的としているといっていいでしょう。バター不足問題とはまったく無関係どころか、国家貿易制度の運用と連携して、むしろそのような事態をできる限り回避するための仕組みとして機能しているといえます。

 なお、次回は、4「提言は生産者間の不平等を助長するという点」について詳しい説明を試みる予定です。










4「提言は生産者間の不公平感を助長するという点」に関する補論




 前回に引き続き、今回は4「提言は生産者間の不公平感を助長するという点」について、やや詳しく触れてみましょう。


1 提言はいいとこ取りを奨励し、乳価の格差を拡大する

 ここでは、経済学者などが好んで使う投資関係の用語を用いて今回の規制改革会議の提言の意味するところを考えてみたいと思います。

 指定団体傘下の生産者(インサイダー)は、価格の高い飲用向けの市場に無理に販売をせず、生乳需給の季節的変動などによって必然的に発生する加工原料乳の価格面での不利性や供給過剰時の生産調整(減産)のリスクをすべて共同で平等に引き受け、そのリスクに対して国から補給金の交付を受けることにより、経営の安定を図るという経営を選択しています。さしずめローリスク・ローリターンの経営を行っているといえるでしょう。

 他方、アウトサイダーの生産者は、生産した生乳をすべて価格の高い飲用向けの市場に販売することによって利益の最大化を図る一方、飲用市場で販売しきれない場合のリスクを負っています。さしずめハイリスク・ハイリターンを目指す経営を行っているといえます。現行制度の下で、いずれも自らの自由な判断により選択したものであり、それはそれでよいでしょう。

 では、このような文脈でみた場合、今回の規制改革会議の提言はどのようなことを意味するのでしょか。

 インサイダーである平均的な生産者の正直な気持ちを、巷間言われている直截的な言葉を借りて表現すれば、需給調整などの面倒なことや加工原料乳の価格面での不利益などは既存の指定団体や傘下の生産者の負担に依存しておいて、飲用乳価の価格面でのおいしいところだけをすくいとるような行動をとる生産者を支える仕組みを作ること、といえないでしょうか。

 現行制度の隙間を利用し、ハイリターンを求めて生乳を飲用向けの市場のみで販売しようとした結果、販売しきれずに加工原料乳が発生してしまった場合に、それに対して補給金を交付することになりますが、それは既存の指定団体傘下の生産者の負担に依存して、ハイリスク・ハイリターンの経営をローリスク・ハイリターンどころか、ほぼノーリスク・ハイリターンにすることを意味します。


2 リスク負担を負わぬ者にリスク補填する政策的合理性はあるか

 つまり制度に基づく補給金を受け取る者の公的責務として、自らの努力と負担も伴いながら安定した経営環境の獲得と、安定した生乳供給を実現すべく努力しているインサイダーに対し、インサイダーの創出した有利市場である「飲用市場」だけを目指して生乳を販売し、売り切ることに失敗した時には、需給調整への参加もなくインサイダーと同じ補給金を手にする。それは単なる「損失補てん」ではないか。リスク負担を負わぬ者に国費でリスク補填を行うという意味で、生産者間の不平等を助長する、あるいは広げるような制度を政策的に作り上げることになるのではないか。この問題を規制改革会議の逆側から見つめる国内生乳生産のおよそ97%を担う農家の視点は、そういうものになります。

 またその結果、前回の補論で述べたような混乱の影響から、酪農家の離脱や飲用市場への供給過剰、乳製品向けへの供給不安定化をもたらすことになります。そうした食料供給の不安定化を「積極的に誘導する政策」、それが果たして国費を投じる政策として国民の要請にかなったことと評価されるものなのでしょうか。


3 米国の酪農政策はどうなっているか
  ~日本で言えば指定団体の再編を推進し、同一地域の生産者乳価を同一に~


 規制改革会議関係者から、イコールフッティングという言葉がよく聞かれます。辞書を引くと、イコールフッティングとは「競争を行う際の諸条件を平等にすること」とあります。

 ここで自由競争に最もうるさそうな米国の例を見てみましょう。米国の酪農は、1937年(昭和12年)農産物販売協定法に基づく連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度によって規制されています。

 FMMO制度は、独自の制度をもつカリフォルニア州を除き、全国の主要な生産地を10のオーダー(日本の広域指定団体の地域ようなもの)にまとめ、同一のオーダー内で生産される生乳について、用途別の最低取引価格を設定するとともに、乳業者に対して、用途別乳価を加重平均したプール乳価で支払うことを義務付けています。

 指定団体改革の観点からもう1つここで注目すべきは、このオーダー(地域)数の推移です。1962年(昭和37年)のピーク時には83ものオーダーがありましたが、生産者に対して安定的な市場を提供するとともに、消費者に対しては合理的な価格で十分な量の良質な牛乳を提供することを目的に、1990年代後半までに31にまで統合され、さらに1996年(平成8年)農業法によって11に再編統合され、現在では10にまで統合されてきているという事実です。1937年(昭和12年)農産物販売協定法に基づくFMMO制度は、制度疲労を起こすどころか、むしろますますその力を発揮しています。米国のFMMO制度は、日本の指定団体の機能(プール乳価での支払)を乳業側が担うという違いはありますが、乳価の形成や酪農経営の安定を図るために、政策が目指す方向と手段は類似しているといえるでしょう。


4 カナダの酪農政策はどうなっているか
 ~日本で言えば、指定団体を一層統合し、より広域の生産者の乳価を同一に~


 また、カナダでは厳格な生乳供給管理制度が採られています。その運用は、連邦政府と州政府により分担されており、連邦政府が加工原料乳の供給管理を、州政府が飲用乳の供給管理を、それぞれ連携を取りながら行っています。

 実際には、加工原料乳については連邦政府の機関であるカナダ酪農委員会が、飲用乳については州政府により法的権限を与えられた生産者が運営するミルク・マーケティング・ボード(MMB:日本の広域指定団体のようなもの)等が、それぞれ供給管理を行うとともに、州政府が用途別の乳価を決めています。その際、加工原料乳価格はカナダ酪農委員会が定める乳製品の支持価格を参考に決定し、飲用乳価は各州政府が独自に決定する仕組みとなっています。

 生産された生乳については、日本の指定団体と同様にMMB等がすべて一元的に購入し、個々の乳業者に販売する一元集荷多元販売が行われています。また、生産者には日本や米国と同様、加重平均したプール乳価での支払いが行われる仕組みとなっています。従来は州単位で乳価がプールされていましたが、現在はさらに再編統合が進み、あの広大なカナダを東部5州(P5)と西部4州(P4)の2つのグループに統合し、生産者にはプールした乳価が支払われる仕組みとなっています。

 なお、日本においては、指定団体は1966年(昭和41年)に施行された加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づき、全国の各都道府県に設立されましたが、2000~2001年(平成12~13年)に47から10に再編統合され現在に至っています。


5 イコールフッティングとは、同一地域の生産者の乳価を同一にして競争条件を平等にすることではないのか

 以上のとおり、酪農先進国である米国及びカナダにおいては、規制改革会議が提言した指定団体を廃止あるいは分割するような方向とは真逆の対応が進んでいます。これを日本に置き換えれば、いわば指定団体の再編統合が今なお進んでいるということになります。

 以上の例をみればわかるとおり、自由取引・自由競争を旨とする両国においては、競争を行う際の諸条件を平等にするためにこそ、同一地域(日本の広域指定団体がカバーする地域よりもはるかに広い地域)の生産者の乳価をプール乳価により基本的に同一にしているということに注目すべきでしょう。これが本来の意味でのイコールフッティング、すなわち競争を行う際の諸条件を平等にすること、ということではないでしょうか。

 はたして、規制改革会議の提言の内容が競争の諸条件を平等にするイコールフッティングといえるのかどうか、本ブログの読者ばかりでなく規制改革会議の賢明なる委員の皆様に冷静に判断していただきたいと思います。








制度理解の前提として考えるべき「酪農の事情」

 ここでは、研究会の論考を理解するうえでの「参考」として、酪農の制度政策論議を行なうにあたり、基本としておさえておくべき酪農の事情について、ここでは酪農の「生産活動」と「生乳需給調整」との関わりから解説したいと思います。(研究会員T)


1.生乳流通上の基本的な制約要因

 酪農家の仕事とは、一般の方々もよくご存じのように、乳牛を「良好な健康状態」で飼い、授精して子牛を出産させ、母牛の出す乳を搾って畜産物として出荷することが基本です。

 農家が出荷する乳は「生乳(せいにゅう)」と呼ばれます。腐敗しやすく、品質の劣化も早いため、その出荷管理には「冷蔵」(エネルギー及び施設にコストを要する)とともに、可能な限り素早く流通(物流コストを要する)し、速やかに製品とすることが産業命題となります。製品化されたものは、牛乳・乳飲料などの場合、殺菌工程を経て無菌充填されることが現在では一般的であり、また乳製品も多くの場合(脱脂粉乳のように冷蔵を要しない安定した形質のものもあります)、生乳以上に冷蔵保存に適した製品形態となることから、生乳に比べ安定した状態で一定の期間(商品形態によって賞味期限等は異なる)保存管理しやすい状態にする必要があります。

 また、あまりに当たり前過ぎて、逆に思いがけないことかもしれませんが、生乳は繊細な品質管理を要する「液体」であり、貯蔵といっても、その辺りに置いておくことはできません。必ず冷蔵する仕組みを伴った「何らかの容器」に入れる必要があります。生乳経済のうえでは、大型のタンクがその貯蔵単位となりますが、これには常に「容積」の制約があり、容量を超えて入れることはできません。生乳が余っている時に、タンクに余剰生乳が残ると、次の日に乳牛から新たに生産された生乳は「入るスペースがない」という状態に陥ることになります。また生乳の物流の観点では、輸送車両のタンクを可能な限り満度に生乳を積載することが最も効率的であり、タンクの容量に満たない量の生乳を輸送することは、「空気」を運ぶことに輸送費をかけるようなものにもなります。また生乳の品質の点でも、輸送中に生乳がタンク内で大きく波打つような空間があると、タンク内で乳脂肪分(クリーム分)の分離を促す問題があり、輸送においては、出来る限りタンク内で生乳が波打たないような繊細な配慮も必要とされています。

 以上のように、生乳という原料畜産物は、流通過程で「冷蔵」と「容器」の制約の下で、鮮度の問題から「遅滞なく物流する」ことが、品質や食品安全性の観点から、常に求められています。生乳の物流にはタンクを中心に見た時、「入口」と「出口」を経る乳量のバランスの関係において、タンクの容量を限度とした一定の均衡(バランス)が必要であり、つまり「滞留無く流れる」ことが死活的に重要となるわけです。


2.生乳が余ったとしても、搾乳を止められない酪農家の現実

 よく言われることですが、コメやタマネギやジャガイモなどのように、保存の効く耕種農産物とは異なり、酪農では母牛が泌乳期にある間は、日々、止まることなく搾乳をしなければなりません。例えば生乳が余っているからといって、「牛から乳を搾るのを減らせばよいではないか」と思う人も多いかもしれませんが、それでは牛が「乳房炎」という病気になってしまいます。

 乳房炎の牛から搾った乳は、家畜衛生上の問題として、出荷の対象外となります。また重度の乳房炎になった牛は、その後の乳質が著しく低下したり、牛の乳房の機能そのものにダメージを負うため、酪農経営の経済性の問題から、廃用を迫られることにもつながっていきます。比較的軽症の乳房炎の場合、投薬などで治療も可能ですが、その場合、投薬した薬品が乳のなかにも残存してしまうため、生乳出荷のために飼養する一般の乳牛とは一定の期間、区別して管理され、病状を悪化させないための搾乳は行ないますが、乳房炎の牛から搾った生乳は廃棄されます。

 生乳の出荷販売を生業とする酪農家は、コストをかけて調達した飼料を牛に給与して、収穫物である生乳を得る訳ですが、上記のように搾乳のために飼っていた牛を、需給上の都合や病気で処分したり、一定期間出荷できないなどの事態を招くことは、当然ですが、酪農家にとって、決して小さくはない経済的ダメージを伴う問題になります。


3.需給調整の取り組みとして、酪農家ができることとは何か

 酪農家の段階でできる最も有効かつ基本的な需給調整手段とは、どういうものなのでしょうか。

 生乳が足りないときにできることとは、「牛の数を増やす」、あるいは牛のお乳がよく出るように「飼料を工夫する」というものです。しかし飼料での調整は、酪農家にとって、飼養管理の腕の見せ所ではありますが、あくまで牛の産乳能力や体調とも相談しながらの取り組みであり、無理をすれば牛の健康を損ねるリスクもあります。

 逆に生乳が余っている時にできることとは、「牛の数を減らす(廃用)」というものです。牛を減らすということは食肉用として出荷したり、病気になった牛や1頭当たりの搾乳量が他の牛より低い高齢牛や低能力牛を廃用(と畜処分)することです。しかしこれは酪農家にとって心理的にも経営コスト的にも、小さくはない負担や損失を伴うものです。

 酪農家の段階における生乳需給調整の特徴として注目すべきは、「牛の数を減らす」ことには「即効性がある」ということです。牛を処分すると同時に生乳生産が減少するからです。しかし逆に「搾乳牛の数を増やす」のは長い年月を要するものとなります。生乳が母牛の泌乳期にのみ生産可能なものであるため、生乳生産を増やすためには、子牛を産めるまで、言い換えれば子牛を大人に育てるまで期間が必要であり、さらに妊娠期を経て、出産するまで、概ね3年間ほどの期間が必要(酪農乳業界では「ミルク・サイクル」と呼ばれます=参考・雪メグHPの「ミルクサイクル」解説)になるためです。


4.「食肉市場の原理」が生乳生産の回復に与える影響

 最近の生乳需給において、とくに酪農界の課題になっているのは、生乳の増産です。国内の生乳生産量の不足から、バター不足が続いた近年、乳価の引き上げも行なわれていますが、生乳生産の回復には時間がかかっています。これはなぜなのでしょうか。これまでに述べてきた「酪農家段階」における需給調整機能が、酪農の現場でどのようなことになっているか、最近の状況を見てみましょう。

 以下の話は、生乳の増産が求められる情勢にありながら、乳価が少し上がれば酪農経営が単純に改善するというものではない現状に関するものです。見るべきは、酪農の経済活動が持つ奥行きの深さです。

 牛の頭数を増やすのは決して単純ではなく、搾乳できるまでに、最短でも概ね3年間近くかかるという話をしてきましたが、それに加えて難しいのは、搾乳牛の増加ペースにさらなる影響を与える外的要因として、個々の酪農家の経営状況との兼ね合いから、「食肉市場」の影響を受けるというポイントがあげられます。 つまり酪農家とは単に生乳を生産するだけの産業ではなく、肉用牛資源の生産も担う重要な産業となっているためです。

 酪農家が乳牛に種付けする場合、オスとメスは通常は半々の確率で生まれるものであり、基本としてはオスの子牛は食肉向けに出荷され、メスの子牛は搾乳用の経営資源として手元に残したり、他の酪農家に売却することになります。

 しかし実態はより複雑であり、人工授精技術や受精卵移植の発達によって、乳用のホルスタイン種の牛に、肉用の黒毛和牛の受精卵を移植し、和牛の子牛を生ませるということも、すでに一般化しています。これによって母牛は搾乳できる状態になりますが、和牛を産んでしまっては次の世代の搾乳資源は確保できません。また乳牛に和牛を直接交配して交雑種(肉用牛)を生産するのはもっと一般化していますが、この場合も同様に、次の世代の搾乳資源となる後継牛は確保できません。

 平成28年現在の畜産情勢は、和牛の市場価格は極めて高い水準での取引が続いており、近年の酪農経済に様々なアクシデントや逆風が伴った影響(注=この概要は参考解説として別掲)から、経済的に疲弊感を強めた酪農界にとって、和牛市場の活況には大きな経済的魅力があります。また和牛など食肉用の牛の生産体系には、子牛を一定の健康体にまで育てる初期の「育成段階」と、肉質を含めて肉牛の付加価値を向上させるための飼養期間となる「肥育段階」がありますが、酪農家から肥育農家に子牛を出荷すれば、酪農家にとっては搾乳に供する乳牛よりも相対的に短期間で出荷・販売できることになるため(酪農家の経営形態によっては肥育までを行なうケースも多くあります)、搾乳牛を育てるよりも早く、しかも近年の食肉の高値で大きな利益を獲得できることが魅力になるわけです。肉牛を最終的に食肉として出荷するまでに要する期間は概ね30カ月間ほどかかりますが、酪農の場合は同じような期間をかけて乳牛を大人にしたあと、やっと生乳を搾れる訳で、平均でその後3年間ほどの搾乳期間を要して経済活動を行なう訳ですから、経済物として換金するまでの「時期の利益」は大きな違いがあることになります。

  参考①=和牛(肉専用種)と乳用種(食肉出荷用の乳雄牛)の収益性の違いはこちらをご覧ください。
      
  参考②=搾乳牛1頭当たりの収益性については、農水省の「牛乳生産費」統計調査という資料があります。


5.乳牛の頭数が簡単に増えないのはなぜか

 酪農家に経済的余力があるなかであれば、当然のことながら、自身が酪農を継続するうえで必要な「後継牛(搾乳牛)」を確保することの優先順位は高くなります。しかし肉牛の価格が高騰する大きな収益機会となっていたり、酪農家に経済余力が乏しい環境の下では、「背に腹は代えられぬ経営判断」として、高値で早く収益をあげられる「交雑種」などの肉牛の生産が重視されることになります。とくに酪農の生産コストが北海道より高い都府県では黒毛和種の交配率が高く、また近年では北海道でも、交配率に上昇傾向が見られます(参考=乳用牛への黒毛和牛の交配率)。

 このことは、例えば100頭のメスの乳牛がいたとすると、潜在的には乳牛のメスとオスを50頭ずつ産む産業基盤がありながら、そこに和牛を40頭(40%)産ませてしまうことで、乳牛資源は残る60頭の半々(オス30頭、メス30頭)になるという現実を意味します。現在は雌雄選別精液を生産してメス牛の出生比率を人為的に上昇させる技術開発にも努力されていますが、この残る60頭全部にそうした技術を活用しても、出生比率は現在の技術水準では、オス28頭、メス32頭ほどの差を生むにすぎません。しかし雌雄判別受精卵移植には受胎率(妊娠する比率)が低くなるという技術的課題も指摘されている現状もあり、技術の進展度によって、その効果は絵に描いたように実現しない現実もあります。

 また極めて優良な遺伝資源を持つ牛を潤沢に所有する酪農家のなかには、自身が後継牛として確保する一部を除き、酪農家相手に搾乳後継牛を販売することをビジネスモデルとする酪農経営もあります。しかし国内酪農全体のなかで搾乳後継牛の生産・確保がうまく回転していない現状から、搾乳用の乳牛市場も空前の高騰を見せている状況にあり、「すぐに搾れる牛が欲しい」という酪農家さんにとって、なかなかセリ市場で手を上げられない値段(参考=ホクレン家畜市場集計)となっている現在の生産事情があります。
  
  それならば、すぐに搾乳できる牛を「輸入」すればよいではないか、という議論は業界のなかからも当然の考え方として出ています(参考=Jミルクの緊急政策要望)が、現実にはそう簡単ではありません


6.酪農経済に影響する「市場原理」とは、「生乳市場」の原理だけではない

 規制改革等の議論では乳価が上がっても単純に生乳生産が回復しない現状を見て、「酪農家に経済原理が働いていない」と論評する自称・専門家も(なかには「素人」を公言して、産業を混乱させている自覚がない人も)いるようですが、まじめに酪農経済の勉強をしていない極めて一面的な評価です。単純に乳価が上がっただけでは生乳生産の回復が進まない現状には、上述してきたような「食肉市場の原理」の影響が強くあります。つまり生乳市場とは別の「食肉の市場原理」の影響を意図的に無視する暴論です。

 個々の酪農家は生乳に限らず食肉でも「市場動向」を十分に分析のうえ、経営マインドを発揮して、自身の経営のバランスシートを良好にするために、至極当然の経営判断を下しています。酪農はもちろん、乳牛を飼い、生乳を生産することが基本の産業ですが、その農家経営を現時点でもっとも安定的に行なうために、肉牛市場も視野に入れた、複合的なポートフォリオを組んでいる訳です。

 しかし現状では、近年の様々な外的要因のなかで疲弊した酪農家の経営基盤の回復のため、眼前にある値の高い肉牛市場からの「収益」の獲得が、平時以上に重視されたポートフォリオを組む農家が多い状況と言えます。このことは酪農経営の改善に大きな寄与をもたらしていますが、「生乳増産のため」には逆に障害となっている悩ましい構図があると言えるでしょう。

 ここであらためて考えていただきたいのは、このブログのテーマに照らして、「生乳生産の回復が今、なぜ遅れているか」を考えた時に、ここで解説した現状を重ね合わせて考えると、果たして「指定生乳生産者団体制度」は関係あるのでしょうか、ないのでしょうか、という視点です。

 今春の規制改革会議による「提言」では、「バター不足(生乳不足)」の原因が「指定生乳生産者団体にある」との見方から、「指定生乳生産者団体制度の廃止」を求めた内容ですが、現在なぜ生乳生産が回復しないのか、その理由を考える時に、上述のように「指定生乳生産者団体制度」に原因を求めることには「相当な無理がある」と言えます。

  産業的に厳しい需給調整(増産・減産の双方向ともに、という意味です)を要する局面で、酪農家からいつも発せられる言葉は「生乳は水道の蛇口をひねるように、需給調整ができる品目ではない」というものです。その理由はこれまで述べてきたように、減らすことは物理的に簡単でも経済ダメージが極めて大きく、逆に増やすことには日数が最短でも概ね3年かかる「遅効性」とともに、酪農家が多面的に担う「肉牛供給者」としての役割から、「肉牛市場」の影響も受けるという難しさがある訳です。 


7.本稿のまとめ(生乳の合理的な「需給調整」とは何か)

 以上のように、生乳の需給調整を、酪農の生産段階で行なうことは、減産は迅速に可能であっても酪農経営に与えるはダメージが大きく、また増産は本来的に時間を要し、外的な経済要因の影響も受けるなど、酪農という産業には市場動向に対する迅速かつ柔軟な対応が困難だという、産業上の「特性」があります。

 一方、生乳とは数々の牛乳乳製品を製造するための単一の「原料畜産物」ですが、生乳を主な原料として作られる 牛乳やヨーグルト、バターや脱脂粉乳、チーズなどの牛乳乳製品は、クリームや脱脂乳などの主に原料用途の中間的な生産物も含めて種類が極めて多いことも重要な「特性」となります。こうした多様な牛乳乳製品は市場において、それぞれの品目で日常的に販売の増減変化を生じており、当然のように、その日その日の販売動向に合わせた製造調整が、主に乳業側の努力によって日常的に行なわれています。

 そうした最終製品の市場動向に合わせて、原料である生乳の需給調整を迅速かつ弾力的に行なうには、生産調整が難しい生乳で慌ただしく調整を行なうよりも、むしろ増減を繰り返す各種製品の「用途の違い」に着目した、「用途間の配分調整」で可能な限り対処していくことの方が、柔軟な対応がしやすい訳です。その用途間調整のなかで、生乳の特性上、酪農にとって非常に重要な視点となるのは、日持ちのする乳製品と、鮮度性が重視される牛乳などの、「消費の足の速さの違い」に着目した配分調整となります。

 需給調整を行なううえでは、生乳を使う乳業側からすると、本来の必要量よりも、生乳生産量が若干多いぐらいが、最も余裕を持って調整しやすいですが、生乳市場本来の需給に基づく価格形成要素を考えると、必要量よりやや足りない程度が、酪農家にとっては最も乳価の上昇を期待可能で、生乳が売れ残る(廃棄)リスクも低い環境といえます。同様にこの生乳市場の需給原理を消費者側の視点から考えれば、有り余るほどの生乳がある方が、より低価格の生乳を期待できることになりますが、この場合、酪農家の利益とは対立する関係にあるだけでなく、「売れ残るリスク」が増大するため、経営環境をより不安定にすることになります。こうした市場のなかで、酪農家、乳業者、消費者など様々な立場からの要請に対して、その時々の状況に最も「バランスのとれた状況」を目指すことが当然必要になります。

 牛乳乳製品は、人により好みの差があるとはいえ、すでに日本の「基幹食品」であり、消費者にとって値が高すぎず、酪農家にとって値が安すぎず、また捨てるほど余らず、深刻な不足を起こさない「安定した価格・需給」が強く求められる産業です。

 そのうち需給調整において、「生乳の需要総量に対して過不足を生じる場合」には、酪農家の段階で増産・減産の調整が最終的には必要な課題になります。しかし大幅な増減対応に困難の多い酪農に対して、過度に需給調整負担をかけないことが、生乳の安定的な生産・供給環境の維持には重要で、そのためには、総需要に対してできる限り過不足のない生乳生産の下で、用途間調整を中心に、その時々の市場情勢に対応し「生乳が多すぎず、少なすぎない環境」を目指していくことが、需要側にとっても、供給側にとっても、最も合理的なものといえます。

 一連の酪農の規制改革をめぐる議論では、中央酪農会議と指定生乳生産者団体を中心とした「計画生産」が、旧社会主義下の「計画経済」と同義、との意見もあります。しかし「計画生産」と呼ばれているものの正式な名称は「計画生産目標数量」、つまり「目標」です。基本は時々の需給調整上の要請に対し、増産努力で応ずるか、生産抑制努力で応ずるか。その「方向性」を酪農界のインサイダーにとどまらず、乳業者、実需者も含め内外に示すものです。この目標の進捗状況に関しては、毎月の実績管理がなされ、目標との乖離状況が逐次、酪農界にアナウンスされており、年度の目標に対して、現状の生乳生産が多いのか、少ないのか、または目標から外れていく生産トレンドか、近づいていくトレンドかの「目合わせ」を行ないつつ、産業活動が営まれています。

 ここまで述べてきたように、生乳は増産も減産も簡単な問題とはならず、需給上の想定を1%程度外れるぐらいならば誤差の範囲ですが、2%以上乖離してくると、様々な生乳需給上の問題を生じてくる産業ともいえます。国内の生乳生産量は1年間で約740万㌧にのぼり、1日あたりには2万㌧の生乳が国内を行き来しています。生乳生産の1%とは7万4000㌧、2%は14万8000㌧ですが、これを10㌧積載の生乳輸送車両で換算すると、1%で年間7400台、2%では年間1万4800台。㌔㌘当たりの飲用乳価を115円として換算すれば、1%で85億1000万円、2%では170億2000万円という規模になります。それらを1日当たりで見れば1%が20台、2%が40台という計算で、同様に飲用乳価換算では2300万円~4600万円ということになります。

 当然の事実として、乳業側が保有する工場の処理能力にも「限界」はあり、能力を超えて製品加工を行なうことはできません。また季節的な需給変動も酪農乳業の特徴で、酪農では、とくに都府県の場合、夏の暑さで乳牛が体力を消耗すると乳量は減少します。また需要側では「学校給食用牛乳」の影響が大きく、飲用牛乳需要は年間約400万トンありますが、その約1割を学校給食用牛乳が占めています。この需要が特異なのは、学校には「夏休み、冬休み、春休み」があることで、もちろん土日や祝日もそうですが、合計すれば1年のうち5~6カ月は需要のない日があることになります。スーパーマーケットで土日祝日に牛乳の特売が多いのも、これを調整する市場側の対応ですが、長期の休みでは特に、牛乳以外の用途へ、生乳を振り向けなければならない訳で、それを酪農側から主体的に販売調整するのが「指定生乳生産者団体」です。

 こうした産業規模のなかで「生乳に行き場がない」という事態が起こると、産業の混乱がどれほどのものになるでしょう。指定生乳生産者団体の仕事とは、時間が経てば確実に品質が劣化する生乳に、「確実な行き場」を確保し、場合によっては、価格の安い乳製品向けに回してでも、全量を販売しきる、契約上の「責務」があります。そのかわり、契約に際しては「A農家だけ価格の高い飲用向けで、B農家だけ価格の安い乳製品向けで」という、えこひいきのような販売を行なわず、価格の安い乳製品向けで販売した差額リスクを、同じ指定生乳生産者団体を通して販売するすべての農家の間で、出荷乳量に応じ「均等にリスク分配する」取り組み(それは「プール乳価」と呼ばれています)を進めています。加工原料乳生産者補給金制度は、この「乳製品向け」の生乳に対し、交付単価と数量をそれぞれ限定して、持続的な酪農経営がなされるよう支援している制度です。

 いかなる製造業でも、当然のように、「生産計画」や「生産目標」があるものですが、調整のひときわ難しい酪農で、そうした「最もバランスのとれた需給環境」を計るベンチマークとして自主的な目標や計画を共有することが、どうして酪農だけ「旧社会主義的経済だ」と言われねばならないのか。逆にこうした目安もなく、どうやって安定的な生産環境を確保できるのか。指定生乳生産者団体制度に勝る方策があるならば、酪農家はずっと前から、とっくにそうしているに違いないと思いますが、「制度の抜本的改革」を言うならば、その具体的な良策はあるのか。本来議論されるべき問題は、そういうことなのではないでしょうか。
(おわり)










指定生乳生産者団体制度の改革論議に「よく出る言葉」について

 酪農の指定生乳生産者団体制度をめぐる改革論議のなかで、「よく出る言葉」について、解説を試みた原稿が会員より寄せられましたので、以下に掲載します。内容は当ブログの意見・補論とも一部重複するものがありますが、より詳しく内容理解を目指す方々には、是非、ご一読をお勧めします。


1 「需給調整」とはどのようなものか

 規制改革会議の委員を含め、一般の方々が最も理解しにくいのは、腐敗しやすい液体である生乳の需給調整の問題ではないかと思います。
 腐敗しやすい液体である生乳は、酪農家が搾乳した後すぐにバルククーラー(生乳の冷却・貯蔵機器)で約4℃程度まで冷却されます。
 冷却された生乳は、日々あるいは地域によっては隔日でミルクタンクローリーにより集乳(個々の酪農家の生乳は合乳)され、ストックポイントであるクーラーステーション(大規模生乳貯蔵施設)や乳業工場に搬送され、この過程でさらに合乳されます。
 そして腐敗が進む前に、できる限り早く牛乳やバターなどの乳製品に加工され、消費者の下に届けられます。

 需要は日々の天候や気温により大きく変動しますし、供給(生産)も同様に天候や気温により変動します。牛乳の売れ行きは平日と休日では雲泥の差があります。乳牛は暑さに弱いため、夏になると生産が減少し、逆に冬から春にかけて生産は増加します。一方、牛乳の需要は夏に増加し、冬は減少します。需要と供給(生産)の波が逆になっているのです。学校給食は牛乳消費の1割強を占めますので、夏休みや冬休みなどで学校給食がなくなると、牛乳の需要は一気に約2割も減りますし、逆に休み明けには2割も増加します。また、地域により生乳の不足する地域や過剰になる地域が流動的に変動します。

 したがって、指定団体が中心となって、こうした様々な要因による需給の変動を日々調整しながら、生産された生乳について、飲用牛乳を余らせることなく必要な量だけ供給し、飲用牛乳に回せない生乳は加工(製品の保存期間が長い乳製品向け)に回すという調整が、全国の各指定団体と全国連(全農、全酪連(全国酪農業協同組合連合会))、そして全国の乳業メーカーとの連携により、コストの最小化を図りつつ日々行われています。こうした需給調整が行われるため、原則として、ある地域で生産された生乳がどこに送乳されて、どこの工場で牛乳又はバターなどの乳製品に加工処理されるかについては、固定的ではなく常に流動的であるという特徴があります。

 その上で、乳製品となったバターや脱脂粉乳の在庫水準をみながら、年間のあるいはもっと中長期的な生産見通しを踏まえた需給調整も行われています。在庫水準をにらみながらの需給調整は、基本的には生産者団体による需要を踏まえた生乳の計画的な生産と、販売見込み数量なども勘案しつつ、行政による国家貿易による乳製品の輸入により行われています。この運用さえ適切であれば、バターの不足問題は起こりませんが、一昨年はその運用が必ずしも十分に適切ではなかった中で、バターが不足気味であるとの報道が行われたことから、消費者の買い急ぎがおこり、バター不足問題が顕在化したものと思われます。

 より厳密に言えば、生産者には異論があるかもしれませんが、生産者と乳業メーカー間の価格交渉の際にも、コストのほか需給状況が勘案され、価格が決定されています。また、行政による加工原料乳生産者補給金の交付対象数量、補給金単価及び関連対策の決定の際にも、需給事情が勘案され、例えば、生産が不足していると考えられるときには、増産のシグナルが生産者に送られるように運用されています。


2 「需給調整」生産者及び指定団体の対応

 こうした中で、増産への対応については、個々の酪農家は、短期的には給与する飼料の工夫などの飼養管理の改善により、中長期的には増頭を基本とした規模拡大などにより対応することになります。しかし、そのためには資金の確保ばかりでなく、畜舎の増築の余地、飼料作物生産のための農地の確保、家畜排せつ物の処理が適切に行え、近隣住民との間で問題が生じないことなど、とりわけ都府県においては多くのハードルを乗り越えなければならないので容易ではありません。

 また、自ら経営内で増頭するためには、授精し、妊娠し、2分の1の確率で雌子牛が生まれ、その雌子牛が成牛になるまで育て、その牛に授精し、妊娠し、出産してはじめて生乳生産が開始されるため、最低でも3年近くかかります。自分で育てずに初妊牛を買ってくればいいといっても、それではA農家で生産する予定であったものがB農家で生産することになるだけで、全体としては増産には貢献しません。

 では、輸入ではどうかというと、BSEなどの伝染病の発生により、主要酪農国である北米やヨーロッパからは輸入できません。乳牛を輸入できる国は、乳牛の産乳能力の低いニュージーランドなどしかないため、ほとんど行われていません。

 減産が必要な場合は、搾乳牛の淘汰くらいしか有効な方法がありません。搾乳牛を淘汰すれば、その分だけ収入が減ることになります。平均的には、1頭当たりで100万円近い減収になりますので、生産者はなかなか踏み切れないというのが実態です。巷間言われているように、水道の蛇口を閉めるようにはいかないのです。

 指定団体は、その会員である農協等を通して管内の生産が計画に沿った生産になっているか管理・調整することになります。増産を抑制する場合又は減産が必要な場合、生産枠による管理や搾乳牛の淘汰が行われます。

 EUでは1984年から2015年まで国別の生産枠(クオータ)がありましたし、カナダでは、現在でも生産者間でクオータを売買しながら生産を行っています。搾乳牛淘汰についても、需給緩和による価格の回復を目指して、米国では2003~2010年に実施されましたし、EUでも2015年4月からのクオータの廃止等に伴う価格の低下に対応して、現在、その導入が検討されています。
 規制改革会議において、10年近く前に実施したかつての減産に関連して指定団体が批判されていますが、減産の際の生産枠管理や搾乳牛淘汰は、何も日本に限ったことではないことはご理解いただけたことと思います。とりわけ輸出競争力のない日本にとっては、やむを得ない対応だと言っていいでしょう。


3 「需給調整」輸出の可能性、メーカー及びアウトサイダーの対応

 輸出に関しては、規制改革会議の提言では指定団体関係者の発言として、「一部の指定生乳生産者団体からも、現行制度が生産力伸び悩みの原因となっているため、今後は生産枠による管理をやめて、将来的に供給量が国内需要を上回れば、輸出による調整を志向しているとの意向が示されている」との引用がなされています。しかし後に明らかになった議事録概要を見ると、ここには2つのやや作為的ともいえる引用があります。

 議事録全体を通して読めば、発言者の趣旨はわかるはずですが、正確には、「現行制度が生産力伸び悩みの原因になっている」とは言っていませんし、「供給量が国内需要を上回れば、輸出による調整を志向している」とも言っていません。

 他のところでは、生産量の伸び悩みについて、ここ数年、所得が十分に確保されていないことが原因である旨言及していますし、供給量が国内需要を上回った場合については、基本はチーズの生産を増やすことにより対処すると言っており、現状からはほとんど考えがたい事態として、それでも余った場合には輸出を考えるが、価格が安くなるので、その際には計画生産をなくすことができるかわからない旨答えています。

 これらの2つのやや作為的ともいえる引用は、指定団体制度を廃止するという結論に導くために、論旨があいまいになる「口頭での発言」を利用して、都合のよいところだけを引用し、発言者の本当に言いたい点は引用していないように見受けられます。この点については、多くのヒアリング対象者が、このような不満を抱いているとも聞いています。
 
 さて、生産過剰基調の場合、乳業メーカーは生乳の受け入れ拒否を行うこともできますが、基本的には全量受け入れを行っています。そして過剰在庫を抱えることにより、乳業メーカーは過剰な金利倉敷料の負担を行うことになります。

 また、平成18年に生乳が廃棄されたことがクローズアップされていますが、あの際は日本全体の乳業工場における乳製品の処理能力を超えて生乳が生産されたために起きた、真にやむを得ない廃棄でした。指定団体が予防的な経営判断として廃棄させたわけではなく、「生乳の行き場が無く、捨てる以外の選択肢がない」ところまで追い込まれた、やむを得ない事情であったことを理解する必要があります。このような場合、特定の生産者が不利益をこうむらないよう、指定団体管内の全酪農家で、その生産量に応じて均等に負担することになります。

 では、アウトサイダーはどのように対処しているのでしょうか。基本的に、すべての生乳を飲用向けで売り切る対応しか取れないため、現状では生乳取引価格の引き下げにより対処しています。これはわずかな生産シェアしか占めていないためにできる対応であり、全国の酪農家・指定団体が同様な対応を行った場合には、タダでも引き取ってもらえないでしょう。

 輸出競争力のない日本では、こうした価格による対応や輸出が困難であるため、指定団体による生産量の調整により対処せざるを得ないわけです。


4 部分委託を無制限に認めることとしたらどうなるか

 仄聞するところによると、規制改革推進会議の委員の1人が、「生乳の部分委託を無制限に緩和すべきである」との主張をしているとのことです。これが本当だとすれば、これまでの提言をさらに一歩進め、生乳流通を全くの無秩序な状態にせよと言っているのに等しい主張であると考えます。つまり、酪農家は、自分の都合でどの組織にどれだけの生乳を販売委託してもよく、あるいはどこの工場に生乳を直接販売してもよいということになります。

 一見、酪農家にとってメリットの大きい仕組みのように思えますが、本当にそうでしょうか。あくまで仮定の話ではありますが、よく考えてみましょう。

 まず、酪農家への影響です。本ブログの巻頭にある「規制改革実施計画の推進に対する意見」や補論にも書いたとおり、そのようにすれば、道北や離島などの消費地の飲用牛乳工場から遠くにある生産者ほど不利になるため、そのような地域での生産は衰退に向かうでしょう。他方、消費地に近い都市近郊酪農にとっても、価格の高い飲用市場に生乳が集中することから、飲用乳価は低下するものと思われます。

 次に、新たな組織を含めた指定団体等への影響です。酪農家は所得の最大化を目指して、集乳・販売する組織に対して、乳価の高い飲用向けの生乳として可能な限り販売するよう、委託するでしょう。他方、飲用向けとして販売しきれない生乳については、既存の指定団体くらいしか受け手はないでしょうから、不需要期に限り、生産された生乳の相当部分を既存の指定団体に委託しようとするものと想定されます。

 この結果、生乳の集乳・販売組織は2極分化し、既存の指定団体はいやがうえにも加工原料乳専門の集乳・販売組織へと徐々に移行していくことが考えられます。しかし、上記のように特定の季節だけ生乳を受け入れるということは言うに及ばず、そもそも加工原料乳は年間の生乳取り扱い数量が大きくぶれるため、経営の維持が困難になるか、手数料を大幅に引き上げない限りこのような加工原料乳の取り扱いに特化したような指定団体は存続し得ないものと思われます。仮に存続しえたとしても、多くの参加者による無秩序な生乳流通の中では、生乳需給の調整を行う主体はなくなります。

 もう一つ、困難な問題があります。そもそも、酪農家が生乳の委託先を自由に変えられるようでは、組織にとって生乳の集乳・販売数量が確定できません。したがって、販売数量の裏づけなしに取引乳価の交渉をしなければならないこととなりますが、価格は量と一体的なものであり、交渉が成立するかどうかはやや疑問であると考えます。

 乳業メーカーへの影響も考えてみましょう。乳業メーカーには、多数の組織が可能な限り多くの生乳を飲用向けとして販売しようとして集中すると想定されることから、飲用向け生乳は買い手市場となり、価格には大きな引き下げ圧力がかかることになるものと思われます。

 他方、加工原料乳については、受け入れが不安定になるばかりでなく、飲用として販売できなかった品質の劣化した生乳が流れ込む可能性もあり、安定的で高品質なバター等の乳製品の生産が困難になることが想定されます。この結果、消費者にも悪影響が及びかねません。

 仮定の置き方いかんで、さらに様々なことが想定されますが、推測はこの程度にしておきたいと思います。ただし、はっきりしているのは、指定団体の主要な機能である需給調整、生乳流通の合理化、生乳取引交渉力の強化のいずれも維持されなくなるであろうということです。


5 インサイダーとアウトサイダー

 これは単なる業界用語です。一言でわかりやすく理解できるように、便宜的に、指定団体による生乳共販に参加する酪農家を「インサイダー」と言い、参加せずに自由に生乳を販売する酪農家を「アウトサイダー」と言っているにすぎません。規制改革会議における議論の中では、この業界用語自体を問題視する指摘もありましたが、もっとわかりやすい適切な用語があるのならば、幼稚園のような「さくら組」でも「ばら組」でも、使いたい分類用語を使えばよいだけの話です。

 インサイダーとアウトサイダーの関係が問題視されるときに決まって指摘されるのが、生乳流通のほとんどを指定団体とその傘下の生産者(インサイダー)が担っているという事実です。まるで不正なことでもしているかのように、ほぼ独占しているという指摘がなされます。しかしその理由は極めて単純で、個々の生産者による自主的な選択の結果にすぎません。酪農家が生乳をどこに販売しようと自由なのです

 乳価の高い飲用向けとして販売できない場合のリスクをとってでもハイリターンを目指すならば、指定団体の傘下に入らなければよいわけです。つまり、その方が儲かると考える生産者が、アウトサイダーという経営のあり方を選択しているだけの話です。他方、ハイリターンよりも経営の安定や互助の精神を重視する生産者は、指定団体を通して生乳を出荷しています。その結果として、「生乳の95%以上は全国に10ある『指定団体』を通じて流通」することになっているということです。

 アウトサイダーの生産者が飲用向けの高い乳価を享受できているのは、皮肉にも、指定団体による用途別の需給調整のお陰で、他の用途よりも飲用向けの乳価水準が恒常的に高い市場が創出されているためです(注:飲用向け約115円/kg、加工向け約75円/kg)。
 しかも、指定団体傘下の生産者が、飲用に仕向けられなかった生乳について、加工原料乳の価格面での不利性や過剰時の生産調整(減産)のリスクを引き受けているからでもあります。したがって、規制改革会議の中で議論されているように、既存の指定団体より高い乳価で生乳を販売したいという生産者(アウトサイダー)が新たな指定団体のような組織を自由に作れる仕組みとし、その新たな組織が飲用牛乳工場に近いなどのメリットを活かして飲用向け市場に割り込めば、そのしわ寄せはすべて既存の指定団体とその傘下の生産者(インサイダー)が受けることになります。

 提言のなかに、指定団体について、「生産者から信頼される実力があればこそ、補給金の取扱などの制度的な裏付けなしでも十分にその強みを発揮できるはずである」というコメントが記載されていますが、制度を変更しても既存の指定団体が需給調整を維持してくれるであろうという期待(甘えといってもいいかもしれません)を前提に、新たな組織にはその負担もなく補給金を交付するという優遇制度を作ろうとしているわけです。これが公的な制度設計として適切であるか、議論が必要なことは言うまでもないことだと考えます。


6.バター不足問題の現状

 規制改革会議において指定団体制度に関する議論が開始された理由は、一昨年の暮れにバターが不足したことが発端となっています。バター不足と指定団体制度が無関係であることは、3「目的とは真逆の結果が予想されるという点」の補論で詳述したので、ここでは繰り返しません。ここでは、指定団体制度を改革せずともバター不足の問題は既に解消していることについて、事実関係を基に簡単に説明しましょう。

 まず、9月27日に開催された農林水産省主催の「乳製品需給等情報交換会議」で配布された資料を基に、バターの在庫水準についてみてみましょう。平成28年7月末の期末在庫は、バターの需給について問題なく対処できた昨年に比べ141%(約28千トン)の水準となっています。乳業メーカー等13社(シェア約96%)による小口業務用のポンド、シートバター等の在庫は156%、家庭用は96%とほぼ前年並みとなっています。

 一昨年は小口業務用の在庫が不足したため、街のケーキ屋さんなどが家庭用バターを買いに走ったため、小売店の棚からバターが消えてしまうという現象が生じましたが、問題の発生しなかった昨年にもまして今年は小口業務用バターの在庫が十分に確保されているため、全く心配はなさそうです。むしろ、関係業者からはバター在庫はだぶつき気味であるとの言葉が聴かれます。

 最近の輸入バターの売渡入札の状況をみると、連続的に不落が発生する状況となっており、このことを裏付けています。農林水産省は9月27日にバター4千トンの追加輸入を発表しましたが、これはあくまで年明け以降の需給状況を見据えた念のためのものであり、現在でもまだ約4千トン近い輸入バターの買い手がいない状況です。量販店でも在庫が十分にあるためか、月末発注により日付の新しいバターが要求される状況だということです。

 9月27日に開催された「乳製品需給等情報交換会議」の議事録によると、スーパーマーケット関係者の発言として、「小売店では、陳列量が少なくてすむショーケースになってきているので、一時的に棚が空になることはあり得る。このため、業務筋の大量買いを防ぐために「お一人様一つ限り」をつけている可能性がある」と記載されています。こうした観点からも、「お一人様一点限り」のような店頭告知が、バター不足に起因するものなのか、販売促進が目的のものであるのか、検証が必要だと考えます。

 以上のとおり、バター不足を解消するために指定団体制度を改革するというならば、バター不足は既に解消しているので、指定団体制度改革は必要がないということになってしまいます。また、上記のとおり、国家貿易による追加輸入の運用を適切に行えば、バター不足の問題は解消されるものであり、指定団体制度が関係していないことが理解していただけたものと思います。


7 計画生産と計画経済

 指定団体制度は「社会主義国の計画経済同然だ」という批判が閣僚からもあったと聞いています。仮に、酪農界に社会主義国並みの強制的な計画経済などというものが本当に実行できるのならば、現在の酪農の生産基盤の弱体化という問題は起きていません。本ブログにおいて縷々述べているとおり、生産と需要に影響を及ぼす要因は多面的であり、計画どおりにいかないのが酪農や牛乳乳製品の特徴であるともいえます。これは明らかに「計画生産」という言霊に縛られた、偏った心証評価ではないかと思われます。

 「計画」あるいは「計画的」というのは理想的な姿のことであり、それだけの供給を果たしていくという、いわば生産の目標であり、市場に対する約束のようなものです。しかし、酪農家のみなさんがいつも言うように、実際には生乳生産を増やしたくとも相手は牛なので水道の蛇口をひねるようにはい行かず、天気が変わるだけで牛の体調や草の質も変わって生産量は変動します。牛乳乳製品の全体的な需給状況を絶えず注視し、コントロールしながら、生産を増やしていく方向なのか、減らしていく方向なのか、そういう視点を酪農家と乳業者が共有し、行政による国家貿易の運用とも連携しつつ、最終的には消費者に安定的に牛乳乳製品を供給するためのものであるといえるでしょう。基本的には、酪農乳業関係者が不確実性の大きい需給情勢の見極めをするためのツールの1つであって、それを酪農乳業界挙げて注視しながら経済活動に取り組んでいるということです。


8 付加価値の創出

 国の加工原料乳生産者補給金制度は、指定生乳生産者団体にのみ、乳業者との間で生乳取引を行う際、生乳を用途別に区分して取引することを求め、認定された加工原料乳(バター・脱脂粉乳等向け及びチーズ向け)の数量に対し補給金を交付することとしています。

 用途別取引は、生乳取引の透明性を高めるとともに、原料として仕向ける用途別の乳価を合理的に決定する役割を持っています。指定団体にとっては有利販売を行う際の基準となる一方、乳業者にとっては製品の原料乳の価格として重要な意味を持ちます。制度発足当初に比べ、生乳の仕向け先が多用途化したことにより、コンビニスィーツ向けなどに生クリームの需要を創出したり、健康志向で市場が拡大するはっ酵乳向け取引がヨーグルトの需要を支えたりしています。

 このように、指定団体による用途別取引により、消費者の需要を喚起する商品開発が促されているといえます。

 例えば、北海道などで、酪農家が自家製造で手作りチーズなどを作る場合には、指定団体に出荷した生乳をチーズ向け乳価(約65円/kg)で買い戻すことができるため、指定団体への販売乳価(約85円/kg)よりも低い価格で自分の牧場で生産した生乳を使用できます。また、ジェラートを製造・販売する酪農家が増えていますが、指定団体への生乳販売の全量無条件委託を弾力化したことにより、このような自由な取り組みが可能となっています。

 最近、「NHKプロフェッショナル仕事の流儀(28年9月26日放送)」で、地方創生で全国から注目を集める“グルメ戦略“の寺本氏の取り組みとして、ミルクジャム用の生乳を手に入れるため指定団体を訪れる場面が取り上げられていました。指定団体は、経済効率性だけで判断するのではなく、生乳の価値を高める寺本氏の取り組みを支援する姿勢がありました。

 このように、現行の制度が商品開発を阻害しているどころか、酪農家の多様な経営展開や、酪農家による規模の小さい取り組みを後押ししているというのが実態です。その結果、多様な国産の牛乳乳製品の供給や地方創生の取組にも貢献し、消費者に対するメリットにもつながっています。

 規制改革会議の今春の提言によれば、指定団体制度を廃止し、だれもが指定団体のような新たな組織を自由に作れるようにすれば、消費者ニーズに応じた商品開発が促されるとの説明がなされていますが、差別化された特別な生乳を利用した商品を生産・販売することは、現行の制度の下でもできることです。そもそも新商品の開発は、この産業においては乳業が担っているという基本的な事実が忘れられています。新たな生乳販売組織が自由に作れるようになったとしても、生乳を集乳・販売することが本来の業務であり、消費者の需要を喚起する商品の開発を促すことにつながるとは考えられません。


9 生乳生産が伸びない理由

 近年の生乳生産は減少傾向を継続していますが、その背景には、指定生乳生産者団体が全国10団体に再編されて以降の、この15年程度だけをとってみても、生乳生産に負の影響を及ぼす様々な災害や、産業的なアクシデントなどに見舞われ続けてきたという事実があります。具体的に列挙すると、以下のとおりです。

・平成12年:雪印乳業による食中毒事故。
・平成13年:日本初のBSE発生の確認。平成15年末には米国でも確認。
・平成14~19年:歴史的な脱脂粉乳の過剰在庫と過剰在庫処理対策。18~19年は減産型の計画生産へ。
・平成19~21年:世界的な資源価格の高騰。飼料穀物価格は一時約3倍にまで高騰。
・平成22年:宮崎県での口蹄疫の発生。
・平成23年:東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故。
・平成25年~27年:TPP交渉参加から大筋合意。円安傾向への反転等による、国内への飼料供給価格の高騰。
・平成28年:熊本地震、北海道等における台風被害等。


 こうした中で、現在、一部の指定団体や単協の取り組みとして、生産者が自主的に、あるいは行政の支援を受けて、酪農生産基盤の強化に取り組んでいます。さらに、今後の取り組みとして、乳業による支援を基本とした生産者との連携による生産基盤強化のための対策が検討されているところです。

 生乳生産を増やすためには、究極的には搾乳牛の頭数を増やすしかありませんが、様々な制約がありなかなか伸びません。その理由をこれまでの説明なども参考に列挙すると、以下のとおりです。

・都府県の生産が伸びない理由は、土地条件の制約、畜産環境問題(近隣住民への対応、環境対策費が相対的に高くなること)、他の就業機会が豊富なことによる後継者不足などから、規模拡大が困難なこと。

・増頭するためには、授精、妊娠、雌子牛出産、雌子牛の育成、成牛になって授精、妊娠、出産、そして搾乳開始、までに最低でも3年近くかかること。

・肉用牛価格が過去最高水準にある中で、経営として所得の最大化を図るため、和牛を交配することによる交雑種の生産や和牛受精卵移植による和牛の生産はやむをえない選択であり、その結果として乳牛の後継牛が不足していること。

・輸入により対応しようとしても、BSE、ヨーネ病、口蹄疫などの伝染病により輸入可能な国が限られており、現状では、乳牛の産乳能力が低いニュージーランドと、8月25日に輸入解禁されたばかりのオーストラリアくらいしか考えられないこと。加えて、輸入検疫スペースにも限りがあるため、現在はほとんど輸入されていない状況であること。


 規制改革会議は、「酪農の生産・流通体制は消費者のニーズに十分に応えるものとはなっていない」、あるいは「指定体制度のせいだ」と言いたいようですが、以上に挙げた様々な要因のどこが、その主張に関係しているというのでしょうか。酪農乳業関係の実業者からは、その主張が「理解できない」という意見があふれています。









ブログ読者からの投稿メールより


いただいた意見の標題=議事録①
(2016年11月05日掲載。投稿は11月04日22時ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)

 10月18日の規制改革推進会議議事録が掲載されているのですが・・・19ページでMMJ茂木社長は東日本大震災翌日からMMJは集乳していた。危機管理が出来ているといった趣旨の発言があり。
 危機管理どころの話ではなく原発で安全性の定かでなかった生乳を出荷し続けたのかと。それを知らずに消費者は飲んだのではと読めるのですが。真偽不明ですがこれ大問題なんじゃないでしょうか。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nogyo/20161018/gijiroku1018.pdf
 「茂木社長(中略)震災のときも(中略)1日分集乳できなかっただけでそうなのですけれども、インサイダーの方は3月11日から4月末まで、集乳と受精は一切できないという通達が農協から流れて集乳できなかった。」


いただいた意見の標題=議事録②
(2016年11月05日掲載。投稿は11月04日23時40分ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)


 食品の暫定基準値が最初に決まったのは3月17日。空白の5日間、安全かどうか誰もわからなかったMMJの生乳はどこに流通したのだろうか。
 当時、一般的にシーベルトもベクレルもごちゃまぜのような状況だったではないか。だから農協?ははっきりするまで消費者のために組合員に涙を飲んで貰う通達を、したのではないか。それをMMJは無視したということだろうか。
 保健所のモニタリングは一定都県のクーラーステーションや乳業工場で定期的に実施されていた。
 MMJの出荷先、例えば●●の●●●●はその対象だったかもしれないが、●●の●●●●は対象外だったのでは。
 指定団体の生乳ならロットも多くクーラーステーションなどで合乳されて薄まるのでリスクを下げることもありうるがMMJは小ロットだ。
 これが大手乳業さんがいう安全な生乳を安定調達できるという指定団体の役割なのか。
 規制改革どころの話ではないのではないか。真相がわからず不安でならない。


いただいた意見の標題=議事録③
(2016年11月05日掲載。投稿は11月05日00時10分ごろ。本投稿に関しては、「管理者から」ページに11月05日付で記載した「管理者から読者へ、一部掲載内容に関する特別な注意を申し上げます」をご参照ください。)

 http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nogyo/20161018/gijiroku1018.pdf
 食の安全を担う農水省や厚労省は改革される側のまな板に乗っており、かたや規制改革農業WGの担当は原発村を育んだ経産省からの出向者だったはず。
 政権が変わって、政治が正しい判断をしたとしても役人は役人。議事録を差し替えたりするかもしれない。その前に今のPDFをしっかり保存しておくべきでは。
 規制改革での本題ではないかも知れないがもっと根本的に大切ではっきりさせておく問題では。しかし私にははっきりさせるすべがありません。
 自分の誤読であってほしいのですが…連続投稿すみません。気が気ではないのです。
 広く議論する場を提供して下さっている先生方に改めて感謝します。







いただいた意見の標題=閣議決定に背く「改革」について、専門審議会の意見を聞かぬ不思議
(2016年10月27日掲載)

 農政の重大な政策変更を議論する農林水産大臣の常設諮問機関に「食料・農業・農村政策審議会」というものがある。しかし今回の規制改革会議から規制改革推進会議に続く、酪農の「指定生乳生産者団体制度改革」の議論では、その大元となる「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」において、法制度上、唯一の実行主体に定められる組織の改廃が論じられながら、この常設審議会で、未だ一言も、議論が交わされていない、政治上のミステリーがある。

 制定から半世紀にわたり、この制度を日本の酪農政策の根幹と位置づけられながら、その制度機能に重大な改変を加える改革論議が、専門審議会で議論すらされていないことも不思議だが、最近の酪農政策をめぐっては、この審議会で、つい昨年の平成27年3月、酪農に関する中期政策方針となる「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」について、5年に1度の改定を終えたばかりだ。

 その「基本方針」の目次をみると、生産基盤強化のための取組、収益性向上のための取組、国内消費者のニーズを踏まえた生産・供給、生産者団体(注:指定生乳生産者団体を含む)のあり方。、さらには集送乳の合理化など、規制改革会議で議論されている事項がほとんど含まれる。しかも、審議会の委員には複数の学識経験者や実際に酪農・乳業に携わる実務責任者に加え、消費者委員などもバランスよく含んでいる。

 「素人」を公言してはばからない委員が複数含まれ、酪農家の委員がつい最近、やっと1人だけ入った規制改革推進会議と、この「食料・農業・農村政策」審議会のどちらが、生乳の生産・流通や指定団体制度を検討する場としてふさわしいか。その答えは、考えるまでもない。

 しかも、このような生乳の生産・流通に大きな影響を及ぼす可能性の高い制度改革は、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」における生乳生産量や集送乳経費等の目標の実効性にも大きな影響を及ぼすのは確実だ。本来であれば、規制改革会議による、実体経済の影響を無視した、強引で恣意的な素人判断を避けるためにも、「食料・農業・農村政策審議会」においても、議論が行われるべき案件と考えられる。

 安倍政権の政治方針に、農政上、深刻な矛盾を生じているのは、昨年の3月に、この「酪農・肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」を、自身の政権下で中期政策方針として「閣議決定」をしておきながら、このブログが数々論じているように、その実効性がどうみても真逆の結果を招くとしか思えないことを、首相諮問機関の規制改革推進会議に論じさせていることだ。

 この指定生乳生産者団体改革は、「安倍政権下の矛盾」という点でも、政治不信の発火点になる問題ではないのか。何より現在、国会ではTPP協定の批准に向けた審議が進むが、安倍政権が昨年11月に閣議決定した「総合的なTPP関連政策大綱」における酪農の安定対策が、この規制改革論議の目指す方向の下で、どう実現するというのか。これは「国内対策で影響を回避するから、TPPの国会決議は守っている」という趣旨で数々重ねてきた、総理の口上に「酪農家をだましたのではないか」との疑念を強く抱かせる。




いただいた意見の標題=「制度疲労]とは思考停止を表す言葉ではないか。
(2016年10月25日掲載)

 酪農に限らず制度改革を声高に叫ぶ者から出る、何とかの一つ覚えに「制度疲労」という言葉がある。

 しかしそれは、具体的な対案すら描けずに、何とかの一つ覚えで「カイカクゥゥゥゥ!」と叫ぶためだけに用いられる、論者の「思考停止」を表現しているに過ぎない言葉だ。

 「50年も経てば、制度疲労を起こすのは当然だ」といわれれば、相手がその道の素人であればあるほど、反論するのは難しい。

 しかし、このブログでは、すぐに「そうですね」と言わない真剣な論考が重ねられていることに敬意を表したい。

 国の政策に関する議論である以上、大切なのは「公益の実現にどれほど有効なのか」であるのは論を待たない。

 だが、議論にあたって注意を要すのは、その議論相手が事情に通じて言っているのかそうでないのかを確かめることだろう。

 「制度疲労」と言う者たちに聞きたい。「具体的に、何の、どこが、どう制度疲労だと考えるのか」と。

 しかしここまでの議論をつぶさに見ると、その根拠とは50年分の暦をただ数え直すのに疲れた程度の「疲労」としか感じられず、その疲労のためか、眼前に広がる現実の分析さえろくに為し得ぬままに、空虚・蒙昧な「カイカク」を念仏のように唱える者の姿しか見えてこない。議論がまともにかみ合わぬことを、業界人たちは、まるで幼稚園児に哲学を説くような難しさのように感じ、隔靴掻痒たる日々を過ごしているのではないか。

 「建設的な議論」はハナから眼中になく、見識もなしに「カイカクすること」を総理に命じられた人々による、ひたすら「破壊」だけを目的としたこの議論の不毛とは、「カイカク」を唱える識者が幼稚園児並みであるのが悪いのか、それともいかなる難解な物事も、幼稚園児に100%分からせる、まるで魔法の「池上解説」のようなことができない業界や役人が未熟だということなのか。

 現状は、「まともな議論にもならぬ」と、可能ならば放置もしたい心境だが、この幼稚園児は言論の暴力という名の「危険な権力」を、いとも無邪気に振り回してくれる。自分で怪我をして泣き出すならば、それも微笑ましい社会教育というべきだろうが、大人の分別ある品格もなく、無差別に他人へ危害を加えるのも平気な様子に、「食料の安定を損ねることが、国民消費者に顔向けできることだとでも言うのか」と、ただただ憤りとともに、鳥肌が立つ思いだ。
(匿名投稿)






いただいた意見の標題=「規制改革」という自己目的化しやすい魅力的な言葉には注意すべき
(2016年10月09日掲載)

 9月14日付朝日新聞によると、規制改革推進課意義の委員の一人は「既得権益者を打ち破り、構造改革を進める過程に意味がある」と説明している。直接、その委員本人に聞いたわけではないので、発言の確認を行うことはできないが、この記事を読んで、ああやっぱりそうか、と思わざるをえなかった。予想どおりとはいえ、この言葉は、規制改革会議にとっては規制を改革すること自体が目的であり、規制改革により実態経済にどのような影響が出るかは二の次であることを如実に示していると思える。

 この記事では、「規制見直しの当面の『目玉』が見当たらない中で、生乳流通の見直しに道筋をつけ、構造改革の実績をいち早く示す狙いがある」ともされている。やはり改革の結果はどうあれ、政治的な目玉作りが目的なのだろうか。組織の名前がその目的を示すとおり、規制を改革すれば、規制改革会議にとっては大きな得点となるのは間違いない。組織の存在意義は、規制改革を実行することにあるからだ。

 規制改革というと、多くの人は漠然とかっこいいことだと思うに違いない。守旧派あるいは抵抗勢力の既得権益をぶっ壊し、新風を巻き起こして経済の活性化を図る。日本でも海外でも「改革」や「Change」という魅力的な言葉に踊らされている人々はたくさんいる。大手マスコミとて、改革ないし改革派というときは、それが無根拠・無批判に善であり、正義派と同義に用いられているように見える。改めて説明を要しない国民受けする言葉は、マスコミにとって都合がいいので、特に注意が必要だ。(注:冒頭引用した朝日新聞がそうだといっているわけではない)

 我々は生きていく上で、様々な規制の中で暮らしている。しかし、そのほとんどの規制に対しても、我々は全く意識さえすることなく暮らしているはずだ。身近なものでは、安全で公平な生活を営むため、交通規制、各種年齢規制、税制なども我々の生活に制約を強いているが、その様々な規制をまるで空気のようにほとんど意識せずに当然のこととして受け入れ、暮らしているのが「普通の姿」ではないか。

 私たちが安全で快適な暮らしを営むために、一定の規制は必要不可欠だとは思う。しかしそれが「規制改革だ」と一言というと、冒頭の委員発言報道が見られるように、既得権益者の持つ壁を打ち破るイメージ、言い換えれば、当然なすべきことというイメージだけが先行しがちだ。しかしその前にそれが必要な規制であるのか、あるいは不必要な規制であるのかを検討すべきだろう。まずは歴史的経緯や諸外国の先行事例などを参考に、冷静に検討してみる必要があるだろう、と考える。

 今回の規制改革会議における議論の経過をみていると、初めから結論ありきで、規制改革会議のタイムスケジュール感に沿って、どうしてもその結論に結び付けていこうとしているようにしか見えない。おそらく、これまでの報道をみる限り、規制改革会議と大手マスコミは規制改革に関してはコラボしており、その成果を強調する準備ができているように見える。その報道の中には「政府の唱える改革」に対し、眉につばする批判精神は微塵も見えない。(匿名投稿)


いただいた情報の標題=バター不足は本当なのか?。
(2016年10月03日掲載)

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 岡山県内の酪農乳業関係の方でしょうか?。なお本ブログは、新聞の日付とバターの賞味期限に関する、投稿者の意図を明確に確認しておりません。また無用な買いだめを奨励するものではありません。(管理者)











プロフィール

酪農乳業関連制度研究会

Author:酪農乳業関連制度研究会
 私たちは、規制改革会議による指定生乳生産者団体制度に関する提言等について、ある雑誌の特集に様々な立場から論考を執筆した者及びその特集内容に共感する有志です。
 特集では、それぞれに立場は異なるものの、一致して規制改革会議の運営の仕方や提言等について根本的な疑問を共有していることがわかりました。このため、関係者ばかりでなく一般の方々にも、私たちが何を問題としているのかを理解していただきたく、意見を表明することとしました。

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