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4「提言は生産者間の不公平感を助長するという点」に関する補論




 前回に引き続き、今回は4「提言は生産者間の不公平感を助長するという点」について、やや詳しく触れてみましょう。


1 提言はいいとこ取りを奨励し、乳価の格差を拡大する

 ここでは、経済学者などが好んで使う投資関係の用語を用いて今回の規制改革会議の提言の意味するところを考えてみたいと思います。

 指定団体傘下の生産者(インサイダー)は、価格の高い飲用向けの市場に無理に販売をせず、生乳需給の季節的変動などによって必然的に発生する加工原料乳の価格面での不利性や供給過剰時の生産調整(減産)のリスクをすべて共同で平等に引き受け、そのリスクに対して国から補給金の交付を受けることにより、経営の安定を図るという経営を選択しています。さしずめローリスク・ローリターンの経営を行っているといえるでしょう。

 他方、アウトサイダーの生産者は、生産した生乳をすべて価格の高い飲用向けの市場に販売することによって利益の最大化を図る一方、飲用市場で販売しきれない場合のリスクを負っています。さしずめハイリスク・ハイリターンを目指す経営を行っているといえます。現行制度の下で、いずれも自らの自由な判断により選択したものであり、それはそれでよいでしょう。

 では、このような文脈でみた場合、今回の規制改革会議の提言はどのようなことを意味するのでしょか。

 インサイダーである平均的な生産者の正直な気持ちを、巷間言われている直截的な言葉を借りて表現すれば、需給調整などの面倒なことや加工原料乳の価格面での不利益などは既存の指定団体や傘下の生産者の負担に依存しておいて、飲用乳価の価格面でのおいしいところだけをすくいとるような行動をとる生産者を支える仕組みを作ること、といえないでしょうか。

 現行制度の隙間を利用し、ハイリターンを求めて生乳を飲用向けの市場のみで販売しようとした結果、販売しきれずに加工原料乳が発生してしまった場合に、それに対して補給金を交付することになりますが、それは既存の指定団体傘下の生産者の負担に依存して、ハイリスク・ハイリターンの経営をローリスク・ハイリターンどころか、ほぼノーリスク・ハイリターンにすることを意味します。


2 リスク負担を負わぬ者にリスク補填する政策的合理性はあるか

 つまり制度に基づく補給金を受け取る者の公的責務として、自らの努力と負担も伴いながら安定した経営環境の獲得と、安定した生乳供給を実現すべく努力しているインサイダーに対し、インサイダーの創出した有利市場である「飲用市場」だけを目指して生乳を販売し、売り切ることに失敗した時には、需給調整への参加もなくインサイダーと同じ補給金を手にする。それは単なる「損失補てん」ではないか。リスク負担を負わぬ者に国費でリスク補填を行うという意味で、生産者間の不平等を助長する、あるいは広げるような制度を政策的に作り上げることになるのではないか。この問題を規制改革会議の逆側から見つめる国内生乳生産のおよそ97%を担う農家の視点は、そういうものになります。

 またその結果、前回の補論で述べたような混乱の影響から、酪農家の離脱や飲用市場への供給過剰、乳製品向けへの供給不安定化をもたらすことになります。そうした食料供給の不安定化を「積極的に誘導する政策」、それが果たして国費を投じる政策として国民の要請にかなったことと評価されるものなのでしょうか。


3 米国の酪農政策はどうなっているか
  ~日本で言えば指定団体の再編を推進し、同一地域の生産者乳価を同一に~


 規制改革会議関係者から、イコールフッティングという言葉がよく聞かれます。辞書を引くと、イコールフッティングとは「競争を行う際の諸条件を平等にすること」とあります。

 ここで自由競争に最もうるさそうな米国の例を見てみましょう。米国の酪農は、1937年(昭和12年)農産物販売協定法に基づく連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度によって規制されています。

 FMMO制度は、独自の制度をもつカリフォルニア州を除き、全国の主要な生産地を10のオーダー(日本の広域指定団体の地域ようなもの)にまとめ、同一のオーダー内で生産される生乳について、用途別の最低取引価格を設定するとともに、乳業者に対して、用途別乳価を加重平均したプール乳価で支払うことを義務付けています。

 指定団体改革の観点からもう1つここで注目すべきは、このオーダー(地域)数の推移です。1962年(昭和37年)のピーク時には83ものオーダーがありましたが、生産者に対して安定的な市場を提供するとともに、消費者に対しては合理的な価格で十分な量の良質な牛乳を提供することを目的に、1990年代後半までに31にまで統合され、さらに1996年(平成8年)農業法によって11に再編統合され、現在では10にまで統合されてきているという事実です。1937年(昭和12年)農産物販売協定法に基づくFMMO制度は、制度疲労を起こすどころか、むしろますますその力を発揮しています。米国のFMMO制度は、日本の指定団体の機能(プール乳価での支払)を乳業側が担うという違いはありますが、乳価の形成や酪農経営の安定を図るために、政策が目指す方向と手段は類似しているといえるでしょう。


4 カナダの酪農政策はどうなっているか
 ~日本で言えば、指定団体を一層統合し、より広域の生産者の乳価を同一に~


 また、カナダでは厳格な生乳供給管理制度が採られています。その運用は、連邦政府と州政府により分担されており、連邦政府が加工原料乳の供給管理を、州政府が飲用乳の供給管理を、それぞれ連携を取りながら行っています。

 実際には、加工原料乳については連邦政府の機関であるカナダ酪農委員会が、飲用乳については州政府により法的権限を与えられた生産者が運営するミルク・マーケティング・ボード(MMB:日本の広域指定団体のようなもの)等が、それぞれ供給管理を行うとともに、州政府が用途別の乳価を決めています。その際、加工原料乳価格はカナダ酪農委員会が定める乳製品の支持価格を参考に決定し、飲用乳価は各州政府が独自に決定する仕組みとなっています。

 生産された生乳については、日本の指定団体と同様にMMB等がすべて一元的に購入し、個々の乳業者に販売する一元集荷多元販売が行われています。また、生産者には日本や米国と同様、加重平均したプール乳価での支払いが行われる仕組みとなっています。従来は州単位で乳価がプールされていましたが、現在はさらに再編統合が進み、あの広大なカナダを東部5州(P5)と西部4州(P4)の2つのグループに統合し、生産者にはプールした乳価が支払われる仕組みとなっています。

 なお、日本においては、指定団体は1966年(昭和41年)に施行された加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づき、全国の各都道府県に設立されましたが、2000~2001年(平成12~13年)に47から10に再編統合され現在に至っています。


5 イコールフッティングとは、同一地域の生産者の乳価を同一にして競争条件を平等にすることではないのか

 以上のとおり、酪農先進国である米国及びカナダにおいては、規制改革会議が提言した指定団体を廃止あるいは分割するような方向とは真逆の対応が進んでいます。これを日本に置き換えれば、いわば指定団体の再編統合が今なお進んでいるということになります。

 以上の例をみればわかるとおり、自由取引・自由競争を旨とする両国においては、競争を行う際の諸条件を平等にするためにこそ、同一地域(日本の広域指定団体がカバーする地域よりもはるかに広い地域)の生産者の乳価をプール乳価により基本的に同一にしているということに注目すべきでしょう。これが本来の意味でのイコールフッティング、すなわち競争を行う際の諸条件を平等にすること、ということではないでしょうか。

 はたして、規制改革会議の提言の内容が競争の諸条件を平等にするイコールフッティングといえるのかどうか、本ブログの読者ばかりでなく規制改革会議の賢明なる委員の皆様に冷静に判断していただきたいと思います。








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プロフィール

酪農乳業関連制度研究会

Author:酪農乳業関連制度研究会
 私たちは、規制改革会議による指定生乳生産者団体制度に関する提言等について、ある雑誌の特集に様々な立場から論考を執筆した者及びその特集内容に共感する有志です。
 特集では、それぞれに立場は異なるものの、一致して規制改革会議の運営の仕方や提言等について根本的な疑問を共有していることがわかりました。このため、関係者ばかりでなく一般の方々にも、私たちが何を問題としているのかを理解していただきたく、意見を表明することとしました。

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